プレゼン・伝え方の型

科研費「研究方法」欄の書き方|審査員が「実行できる」と判断できる計画の3点セット

令和9(2027)年度の基盤研究・挑戦的研究・若手研究の公募は、2026年9月17日に締め切られました。提出した調書を読み返して、「研究方法のところ、もう少し書けた気がする」と感じている方も多いのではないでしょうか。記憶が新しい今こそ、再挑戦や次の種目に向けて見直す好機です。

基盤研究(C)の様式では、「本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」を具体的かつ明確に記述するよう指示されています。目的や背景は書けても、ここで手が止まる、あるいは手法名の羅列で埋まってしまう。500件を超える産学連携や申請書支援の現場で、繰り返し見てきたつまずきです。

なぜ「研究方法」欄は伝わりにくいのか

理由は2つあります。1つ目は専門知の呪いです。毎日その実験をしている本人には手順が自明すぎて、「なぜその規模なのか」「何が出たら成功なのか」を書く必要に気づけません。審査員は同じ小区分の研究者でも、あなたの手法の細部までは知りません。

2つ目は計画錯誤(planning fallacy)です。Buehlerらの1994年の研究では、卒業論文に取り組む学生の完了日数の予測は平均33.9日でしたが、実際には平均55.5日かかり、予測どおりに終えたのは約3割でした。「最悪の場合」の予測(48.6日)でさえ、実際より1週間ほど短かったのです。

計画錯誤:卒業論文の完了日数(予測と実際)最善の予測33.9日最悪の予測48.6日実際の完了55.5日 最悪のケースを想定しても、なお約1週間足りなかった(Buehler et al., 1994)
図1:人は自分の計画を楽観的に見積もる。審査員はそれを知っている

審査員は経験的にこの楽観を知っています。だからこそ評定要素「研究方法の妥当性」では、研究方法が具体的かつ適切か、研究経費が計画と整合しているかが問われます。審査員は「やりたいこと」ではなく「できる根拠」を読みにきているのです。

審査員に「実行できる」と伝わる研究方法の書き方

1. 問い・手法・達成基準を1対1でつなぐ

目的で掲げた問いの数だけ、検証課題を立てます。そして課題ごとに「何を(問い)」「どのように(手法)」「どこまで(達成基準)」の3点セットを置きます。目的の番号と課題の番号をそろえるだけで、審査員は2つの欄を往復して照合する認知負荷から解放されます。

研究方法は「問い・手法・達成基準」の3点セットで問い(何を)目的の番号と対応させる手法(どのように)対象・規模・手順を具体に達成基準(どこまで)成功の判定ラインを明記 課題1・2・3のそれぞれに、この3点セットを置く
図2:目的の問いごとに「何を・どのように・どこまで」をそろえる

2. 「どこまで」は判定ラインで書く

「〇〇を明らかにする」で止めず、何が観察されれば仮説を支持すると判断するのかを一文で書きます。対象・サンプル数・比較条件といった具体的な数字が入ると、審査員は規模の妥当性と経費の整合性を同時に確かめられます。

3. 年次計画は「依存関係」で並べる

「課題1の結果が課題2の前提になる」のか「並行して進められる」のかを明示します。年度ごとに作業を並べただけの計画では、どこで詰まると全体が止まるのかが見えません。工程を図にする場合、基盤研究(A)以外の調書はモノクロ(グレースケール)で審査に付される点に注意し、色ではなく線種や網掛けで区別しましょう。

4. うまくいかない場合の代替案を1行ずつ

計画錯誤への最も現実的な処方は、「想定どおりに進まなかったら」を先に書いておくことです。各課題に代替手法を1行添え、予備データがあれば「準備状況」の項目と紐づけます。弱みを見せるのではなく、リスクを把握している研究者だと伝わります。

やりがちなNG

  • 手法名を並べただけで、何が分かれば成功かが書かれていない
  • 全年度が「解析を進める」「検討する」で終わっている
  • 目的の番号と研究方法の番号が対応していない
  • 色だけで区別した工程図(モノクロ化で判別できなくなる)
同じ計画でも、書き方で審査員の判断が変わる× 手法名だけを書く「〇〇を網羅的に解析する」審査員:何が分かれば成功?→ 妥当性を評価する手がかりがない✓ 判定ラインまで書く「A群とB群をn=30で比較し、 差が出れば仮説を支持」審査員:これなら実行できる→ 規模と経費の整合も確かめられる 「どこまで」があるだけで、計画は評価できる文章になる
図3:達成基準があると、審査員は計画の妥当性を判断できる

まとめ

研究方法欄は、審査員が「この人は本当にやり切れるか」を判断するための欄です。問い・手法・達成基準を1対1でつなぎ、依存関係と代替案まで見せる。それだけで、同じ研究内容でも伝わり方は大きく変わります。目的・背景との役割分担は研究計画調書「目的」と「背景」の書き分け、審査の観点から逆算する考え方は科研費の評定要素から逆算する申請書の設計もあわせてご覧ください。

伸滋Designでは、捏造や代筆ではなく、研究者ご自身の計画を「伝わる形」に設計し直すお手伝いをしています。申請書の構成や図解の見直しは、研究者・大学向けの申請書デザイン支援からご相談ください。

よくある質問

Q. 研究方法欄に図は入れるべきですか?

A. 課題間の依存関係や工程は、文章より図のほうが一目で伝わります。ただし基盤研究(A)以外の研究計画調書はモノクロ(グレースケール)で審査に付されるため、色に頼らず線種や網掛けで区別するデザインにしてください。 概念図の作り方は科研費申請書の概念図(ポンチ絵)の作り方で解説しています。

Q. 予備データがない場合はどう書けばよいですか?

A. 予備データがなくても、関連手法の実施経験、使える設備、協力体制など「最初の一歩を踏み出せる根拠」を具体的に書きます。あわせて初年度に実現可能性を確かめる段階を設け、その判定基準を明示すると説得力が増します。

Q. 研究方法欄は何ページ書けばよいですか?

A. 令和9(2027)年度の基盤研究(C)の様式では「研究目的、研究方法など」全体で4頁以内と指示されています。種目や年度によって変わるため、必ず最新の公募要領と様式で確認してください。

\ LINE登録で無料プレゼント /

『9つの伝わる型 図解ハンドブック 完全版』
PDF・57ページ/35の研究にもとづく「なぜ効くのか」まで解説

60秒診断・伝え方ミニ講座もLINEでお届けします

📱 友だち追加して特典を受け取る

登録は無料・配信はいつでも解除できます

この記事を書いた人

伸

村中 伸滋 伸滋Design 代表

「伝わる」を科学するプレゼンテーションデザイナー / 外部CSO。認知科学・行動経済学・神経科学の知見をコミュニケーション設計に応用し、経営層の戦略プレゼンから学会発表・研究費申請書まで支援。国際学術誌 ChemPhotoChem の表紙アート採用、大学学長の国際連携プレゼンテーション制作支援などの実績。

プロフィールを見る 伝達ロスを相談する →

関連記事

TOP