プレゼン・伝え方の型

JSTさきがけの提案書の書き方|「領域の方針に合う理由」を最初に渡す3段設計

「さきがけに挑戦したいが、科研費と同じ書き方で通るのだろうか」。若手の研究者から、こうした相談をよく受けます。結論から言うと、さきがけの提案書は「領域の方針に合う理由」を最初に渡せるかで、読まれ方が変わります。

さきがけの提案書が難しい理由

JST公式のプログラム概要によると、さきがけは研究総括が定めた領域運営方針の下で研究者を選ぶ個人型研究で、1領域あたり30〜40件程度を採択します。研究領域運営を支える領域アドバイザーは10名程度で、科学技術面の有識者に加え、必要に応じて産業界の有識者や弁護士なども加わります。

つまり読み手は、自分と同じ専門の人だけではありません。ここで効いてくるのが「専門知の呪い」です。書き手は専門用語の意味を知っているため、知らない人の目線を想像できません。専門が少し離れた読み手は、限られた時間で「この領域に必要か」を判断するため、認知負荷の高い書き出しは読み飛ばされやすくなります。

提案書が読まれる順路 あなたの提案書専門が近いとは限らない読み手に届く領域アドバイザー(10名程度)科学技術面の助言・評価。産業界・法務の有識者も研究総括領域運営方針の下で、研究者を選ぶ 読み手の頭の中にあるのは「自分の専門」ではなく「領域の方針」。
図1:提案書は「領域の方針」を持つ複数の読み手を順に通る

提案書を「伝わる形」にする4つの方法

1. 領域の言葉で書き出す

最初に読むのは、自分の手法ではなく、応募する領域の運営方針と公募要領です。公募は数度に分けて行われ、採択方針は都度公募要領に明記されます。その領域が解きたい課題を自分の言葉で言い直し、書き出しの一文に置きます。結論ファーストは、ここでも有効です。

書き出しの対比 × 技術の説明から入る書き出し手法Aで現象Bの機構を解明する読み手:領域との関係が不明✓ 領域の問いから入る書き出し領域の課題Xに、手法Aで挑む読み手:採る理由が一言で言える 同じ研究でも、最初の一文で「なぜこの領域か」が決まる。
図2:同じ研究でも書き出しで「領域との関係」が見えるか決まる

2. 問い・独自性・道筋の3段で骨格を組む

  • 問い:領域の課題に直結する、一つの問いに絞る
  • 独自性:既存研究との違いを、1文で言い切る
  • 道筋:研究期間を段階に分け、各段階の到達点を書く

研究期間は3年6ヶ月以内、研究費は総額3000万〜4000万円程度/課題と公式に示されています(2026年10月時点の概要。年度や領域で変わるため、最新の公募要領を確認してください)。この期間で何を示すのかが、1枚で追えることが大切です。

提案書の骨格は3段 ①何を問うか領域の課題に直結させる②何が新しいか既存との差を1文で③3年半の道筋段階ごとの到達点 3段が1枚で追えれば、専門外の読み手にも判断材料が届く。
図3:問い→独自性→道筋の3段で、専門外の読み手にも判断材料が届く

3. 「独立した個人研究」であることを示す

公式概要では、若手研究者が個人で独立した研究を行う規模の支援とされています。共同研究者や所属グループの貢献と、自分が担う部分を書き分けましょう。誰が何をするかが曖昧だと、独立性の判断材料が足りなくなります。

4. 全体像は1枚の図にまとめる

文章で説明すると時間がかかる構造は、図にします。作り方は科研費申請書の概念図(ポンチ絵)の作り方と共通です。また、読み手が何を見るかの考え方は評定要素からの逆算設計も参考になります。

やりがちなNG

  • 技術の説明から入り、領域との関係が最後まで出てこない
  • 領域の方針を読まず、他の公募用の文章を流用する
  • 専門用語を定義なしで並べ、専門外の読み手を置き去りにする

500件を超える産学連携や、補助金・申請書の支援の現場でも、不採択の相談で多いのは研究の質ではなく「何を言いたいかが最初に見えない」ことでした。私たちは捏造や代筆はせず、研究者自身の考えを伝わる形に設計することに徹しています。研究費獲得の伴走については研究者・URA向けの支援ページをご覧ください。

まとめ

さきがけの提案書は、研究の説明書ではなく「この領域に、この研究者が必要な理由」を渡す文書です。領域の言葉で書き出し、問い・独自性・道筋の3段で骨格を組み、全体像を1枚に収める。この順で整えるだけでも、読み手の負担は大きく下がります。制度の条件は変わるため、最新の公募要領を必ず確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. さきがけは科研費とどう違いますか?

さきがけは、研究総括が定めた領域運営方針の下で募集・選考される個人型研究です。科研費のように分野で見られるというより、「その領域の方針に合うか」が問われます。募集中の領域と条件は、最新の公募要領で確認してください。

Q. 研究費と期間はどのくらいですか?

JST公式のプログラム概要(2026年10月時点で確認)では、研究期間は3年6ヶ月以内、研究費は総額3000万〜4000万円程度/課題とされています。年度や領域で条件が変わる場合があるため、応募時は最新の公募要領を確認してください。

Q. 提案書づくりの支援は受けられますか?

学内のURAや支援担当に相談するのが第一です。当方も、内容の捏造や代筆は行わず、研究者の考えを「伝わる形」に設計する支援を行っています。

出典:JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「プログラムの概要」(https://www.jst.go.jp/kisoken/presto/about/index.html、2026年10月22日確認)

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この記事を書いた人

伸

村中 伸滋 伸滋Design 代表

「伝わる」を科学するプレゼンテーションデザイナー / 外部CSO。認知科学・行動経済学・神経科学の知見をコミュニケーション設計に応用し、経営層の戦略プレゼンから学会発表・研究費申請書まで支援。国際学術誌 ChemPhotoChem の表紙アート採用、大学学長の国際連携プレゼンテーション制作支援などの実績。

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