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事前登録どおりに進まなかったら? 研究計画の変更を正直に伝える書き方

研究を始める前に、仮説、対象者数、除外基準、分析方法を事前登録した。ところが、募集が想定どおり進まず、測定機器にも不具合が出た。分析を始めてから、当初の方法では答えられない問いがあることにも気づいた。こうしたとき、「事前登録した以上、計画を変えてはいけない」と考えると、研究の安全性や妥当性を損ねることがあります。一方で、変更した事実を伏せたまま結果だけを整えると、読者は何が当初からの計画で、何が途中の判断だったのかを確かめられません。

先に結論を言うと、研究計画の変更は、直ちに失敗や不正を意味しません。伝えるべきなのは、事前登録した予定、実際に行ったこと、変更した時点と理由、そして結果の解釈への影響です。この四つを分ければ、読者は変更の有無だけでなく、その変更が結論をどこまで左右しうるかを判断できます。

事前登録の価値は、研究者を計画に縛り付けることではありません。データを見る前に決めたことと、結果を見ながら考えたことを区別し、発見までの道筋を読者と共有することにあります。本記事では、Open Science Framework(OSF)の案内、事前登録研究の調査、CONSORT・SPIRITの報告指針を手がかりに、研究計画の変更を分かりやすく伝える方法を考えます。

予定、実施、変更理由、結果への影響を順に示して読者の判断につなげる流れ
図1:差分だけでなく、変更理由と結果への影響まで示すと、読者が研究を判断しやすくなる。

事前登録は、変更禁止の契約ではない

OSFは事前登録を、データ収集または分析の前に、研究計画を時刻付きの記録として保存する方法と説明しています。仮説、対象者、測定項目、除外基準、分析方法などを先に書くことで、結果を知る前の判断と、結果を見てから生まれた判断を区別しやすくなります。

ここで誤解しやすいのが、「登録した計画から外れたら、その研究は無効になる」という考えです。Center for Open Scienceは、事前登録を「計画であって、牢獄ではない」と説明しています。研究中には、参加者の安全、新しい知見、募集の難しさ、測定上の問題、統計的な前提の不成立など、当初は見通せなかった事情が生じます。妥当な理由があれば、方法を変えること自体はありえます。

重要なのは、変更をしたかどうかだけではありません。いつ、何を知った状態で、誰が、なぜ変更を決めたのかです。たとえば、データ収集前に測定尺度を差し替えた場合と、結果を確認した後に有利な指標だけを主要評価項目へ変えた場合では、解釈上の意味が違います。変更の時点が書かれていなければ、読者はその違いを判断できません。

隠された裁量が、結果の見え方を変える

研究では、どの観測値を除外するか、どの指標を使うか、いつデータ収集を止めるか、どの共変量を分析に入れるかなど、多くの判断が必要です。Simmonsらは、こうした分析上の裁量を結果を見ながら選び、その過程を開示しないと、偽陽性の確率が大きくなりうることを、シミュレーションと実験で示しました。

これは「探索的な分析をしてはいけない」という意味ではありません。予想外の結果から新しい仮説を考えることは、研究の重要な働きです。問題は、探索して見つけた分析を、最初から決めていた検証のように見せることです。Nosekらは、事前登録によって仮説を検証する分析と、仮説を生み出す分析を区別しやすくなると論じています。どちらも価値がありますが、読み手が同じ重みで受け取るとは限らないため、位置づけを明示する必要があります。

事前登録した研究でも、差分は珍しくありません。Claesenらは、2015年から2017年にPsychological Science誌で事前登録バッジを付けて掲載された27報を調べ、93%に少なくとも一つの事前登録からの逸脱があったと報告しました。著者への確認を含めると、論文中で十分に開示されていない差分も見つかりました。

ただし、この割合を全分野に当てはめることはできません。対象は一つの雑誌、特定の時期、初期の事前登録研究です。それでも、計画変更は例外的な事故ではなく、報告方法をあらかじめ決めておくべき実務上の課題だと分かります。

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「何が変わったか」だけでは足りない

「計画を一部変更した」とだけ書いても、読者は影響を判断できません。変更を伝えるときは、少なくとも次の四つを対応させます。

  • 予定:事前登録では何をすると書いていたか
  • 実施:実際には何をしたか
  • 変更理由:いつ、どのような情報をもとに、なぜ変えたか
  • 結果への影響:結論の強さ、比較可能性、偏りの可能性にどう関わるか

たとえば「対象者数を変更した」だけでは、募集期間の制約なのか、途中結果を見て増やしたのかが分かりません。「登録時は各群100人を予定したが、募集開始前に脱落率の見積もりを修正し、各群120人へ変更した。結果を確認する前に変更を登録した」と書けば、時点と理由が分かります。反対に、結果を確認した後の変更なら、その事実と追加分析の位置づけを明示します。

CONSORT 2025は、無作為化試験の報告で、開始後の重要な変更、事前に定めていなかった評価項目や分析、変更理由を報告するよう求めています。また、変更の時期によって偏りの危険が異なるため、いつ起きたかも重要だと説明しています。SPIRIT 2025も、重要な計画変更を誰が決め、倫理審査委員会、試験登録、規制当局などへどう伝えるかを計画段階で示すよう勧めています。

これらは主に無作為化試験の指針であり、すべての研究に同じ手続きが必要なわけではありません。しかし、「変更内容・理由・時期・影響を対応させる」という考え方は、観察研究、心理学実験、教育研究、利用者調査などでも役立ちます。

「視覚化・構造化」で、計画と実施を同じ場所に置く

伸滋Designの伝わる設計マップにある「視覚化・構造化」は、複数の情報の関係を、順序や対比が見える形に整える型です。研究計画の変更では、事前登録と論文を別々の文書として置くだけでなく、対応する項目を同じ並びで見せます。

本文に短い「計画との差分」節を設け、表の左から、項目、登録時の予定、実際の実施、変更時点、理由、結果への影響を並べます。差分が多い場合は、主要評価項目、対象者、除外基準、分析方法のように項目を分けます。差分がない項目まで延々と列挙する必要はありませんが、結論に関わる重要な部分は「変更なし」と書くと、確認済みであることが伝わります。

事前登録のURLや登録番号も添えます。リンク先を読まないと変更が分からない構成ではなく、論文や報告書だけでも主要な差分が把握でき、必要な読者が元の記録へ進める形が望ましいでしょう。データや分析コードの所在は、データ利用可能性を伝える書き方とそろえると、研究記録を追いやすくなります。

架空例で比べる、伝わりにくい報告と伝わる報告

以下は説明のための架空例であり、伸滋Designの実績や顧客事例ではありません。

ある調査研究では、登録時に「回答時間が3分未満の回答者を除外する」と定めていました。収集後に分布を確認すると、丁寧に回答したと考えられる人にも3分未満の回答が多く、時間だけで除外すると特定の年齢層が偏って減ることが分かりました。そこで、注意確認項目への回答と、同一選択肢の連続回数を組み合わせた基準へ変えたとします。

伝わりにくい書き方は、次のようなものです。

不適切な回答を除外したうえで分析した。分析方法は事前登録に従った。

これでは、除外基準が変わったことも、その変更が結果へどう影響したかも分かりません。「おおむね従った」という表現も、どこが違うのかを読者に探させます。そこで、予定と実施を対応させます。

事前登録では、回答時間が3分未満の回答を除外すると定めた。データ収集終了後、仮説検定の結果を見る前に回答時間の分布を確認したところ、この基準では特定の年齢層の除外率が高くなることが判明した。そのため、注意確認項目の誤答、同一選択肢の連続、自由記述の欠落を組み合わせた基準へ変更した。変更後の基準を主要分析に用い、登録時の基準による分析も感度分析として併記した。主要な結論は両分析で同じだったが、効果量には差があった。

この書き方なら、変更がデータを見た後に行われたこと、その時点では仮説検定の結果を見ていなかったこと、変更理由、結論への影響を確認できます。感度分析は常に必要とは限りませんが、複数の妥当な方法で結論が変わる可能性があるときは、有力な確認手段です。

変更報告を書く手順

1.事前登録と最終原稿を項目ごとに照合する

記憶に頼らず、仮説、主要・副次評価項目、対象者数、募集条件、除外基準、欠測値の扱い、分析方法、停止基準を並べます。参加者数や除外の差分は、参加者フロー図の作り方と合わせると、どの段階で人数が変わったかを確認しやすくなります。

2.変更を時系列で記録する

変更日、変更前の内容、変更後の内容、判断した人、判断時に見ていた情報を書きます。「データ収集前」「割付を知らない状態」「主要分析の結果を確認した後」など、読者が偏りの可能性を判断できる粒度にします。研究中に記録しておけば、投稿時に記憶をたどる負担が減ります。

3.変更理由を、弁明ではなく事実として書く

「必要だったため」「より適切と判断したため」だけでは、判断材料になりません。募集率が想定より低かった、装置の測定範囲を超えた、統計モデルの前提が満たされなかった、倫理審査委員会から修正を求められた、というように、変更を促した事実を示します。安全や倫理に関わる変更は、手続き上必要な承認も確認します。

4.結果への影響を確かめる

変更前後の方法をどちらも適用できるなら、結論や効果量がどの程度変わるかを確認します。主要な結論が変わらなくても、その事実だけで「影響なし」と断定せず、精度、欠測、対象集団の範囲が変わっていないかを見ます。有意か有意でないかだけに頼らない読み方は、有意差が出なかった結果の伝え方でも解説しています。

5.本文と補足資料に役割を分ける

結論に関わる差分は本文に置き、細かな変更履歴は補足資料にまとめます。本文には、元の登録へのリンク、変更の要点、理由、影響を残します。補足資料へ送るだけで本文から手がかりが消えないようにします。

開示しても、すべての偏りが消えるわけではない

事前登録と変更報告には限界があります。第一に、登録文が曖昧なら、あとから多くの分析を「計画内」と説明できてしまいます。時刻が付いているだけで、計画の質や分析の妥当性が保証されるわけではありません。

第二に、すべての研究が細部まで事前に決められるわけではありません。質的研究、探索的研究、設計研究のように、観察や試作を通じて問いが深まる研究では、柔軟性そのものが方法の一部です。その場合も、どこまでが当初の見通しで、どこからが研究過程で生まれた判断かを説明できます。

第三に、変更を多く書けば、自動的に信頼が高まるわけではありません。重要度の低い差分を大量に並べると、結論に関わる変更が埋もれます。WillrothとAthertonは、事前登録からの変更を一定の形式で報告し、読者が影響を評価できるようにする必要を指摘しています。網羅性と読みやすさの両方を考え、重要な差分を本文で目立たせます。

第四に、登録内容と論文の差を見つけても、それだけで意図的な不正とは判断できません。単純な記載漏れ、査読による提案、安全上の修正、研究環境の変化など、理由はさまざまです。変更の有無から人を評価するのではなく、理由と影響を検討できる情報があるかを見ます。

公開前チェックリスト

  • 事前登録のURL、登録番号、登録日を示したか
  • 仮説、主要評価項目、対象者数、除外基準、分析方法を照合したか
  • 登録時の予定と実際に行ったことを同じ項目で比べたか
  • 変更した時点と、その時点で見ていた情報を示したか
  • 変更理由を「必要だった」だけで終わらせず、具体的な事実で説明したか
  • 変更を決めた人と、必要な承認・更新手続きを確認したか
  • 結果や結論への影響を、可能な範囲で確かめたか
  • 追加分析を、事前に計画した分析と区別したか
  • 結論に関わる重要な差分を本文に置いたか
  • 「変更がある=不正」「変更がない=妥当」と読める表現を避けたか

まとめ:計画を守ったことより、判断の道筋を伝える

事前登録の目的は、研究者を変更できない計画に閉じ込めることではありません。予定と実施の差を見えるようにし、どの判断が結果を知る前に行われ、どの判断が研究の途中で必要になったのかを読者と共有することです。

変更があれば、予定、実施、変更理由、結果への影響を対応させます。変更時点と判断材料も書きます。必要に応じて感度分析を示し、主要な差分は本文、細部は補足資料へ分けます。これにより、読者は「計画どおりか」という一問だけでなく、「なぜ変わり、結論にどう関わるか」を判断できます。

研究報告書、論文、研究紹介で、計画と実施の違いをどこまで、どの順序で示すか迷う場合は、伸滋Designのお問い合わせフォームからご相談ください。研究上の判断を単純化しすぎず、読者が差分と根拠を追える情報構造に整える方法を一緒に検討します。

参考文献

  1. Open Science Framework. Welcome to Registrations & Preregistrations.
  2. DeHaven AC. Preregistration: A Plan, Not a Prison. Center for Open Science. 2017.
  3. Nosek BA, Ebersole CR, DeHaven AC, Mellor DT. The preregistration revolution. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2018;115(11):2600–2606.
  4. Claesen A, Gomes S, Tuerlinckx F, Vanpaemel W. Comparing dream to reality: an assessment of adherence of the first generation of preregistered studies. Royal Society Open Science. 2021;8:211037.
  5. Simmons JP, Nelson LD, Simonsohn U. False-Positive Psychology: Undisclosed Flexibility in Data Collection and Analysis Allows Presenting Anything as Significant. Psychological Science. 2011;22(11):1359–1366.
  6. Willroth EC, Atherton OE. Best Laid Plans: A Guide to Reporting Preregistration Deviations. Advances in Methods and Practices in Psychological Science. 2024;7(1).
  7. CONSORT–SPIRIT. CONSORT 2025 Item 10: Changes to trial protocol.
  8. Chan AW, Boutron I, Hopewell S, et al. SPIRIT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for protocols of randomised trials. BMJ. 2025;389:e081660.

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この記事を書いた人

伸

村中 伸滋 伸滋Design 代表

「伝わる」を科学するプレゼンテーションデザイナー / 外部CSO。認知科学・行動経済学・神経科学の知見をコミュニケーション設計に応用し、経営層の戦略プレゼンから学会発表・研究費申請書まで支援。国際学術誌 ChemPhotoChem の表紙アート採用、大学学長の国際連携プレゼンテーション制作支援などの実績。

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