デザイン・図解

誰もが輝ける未来へ|Universal Runway® & Concert 2026 開催報告

2026.09.13 SUN京都リサーチパーク 4号館 バズホール共催・運営

ハンディキャップのある方がモデルとしてランウェイを歩き、演奏し、語る一日。伸滋Designは共催者として、チラシ・パンフレット・公式サイト・当日の投影資料をつくり、本番では映像と音響を担当しました。当日の記録と、その裏側で何を考えて設計したのかを残しておきます。

Runway
6組ランウェイ出演
Sponsors
32社協賛+ご協力3者
Slides
99枚当日投影資料
Pamphlet
A4・8P300部を来場者へ
Part 1 — 当日

紙芝居から始まり、「糸」で終わる二時間

13時開演。紙芝居 → 主催挨拶 → ユニバーサルランウェイ → ディスカッション → ユニバーサルコンサート → フィナーレ、の順に進みました。

01

開幕は、絵芝居師の声から

幕開けは、紙芝居『光のステージ ユニバーサルランウェイ!』。脚本は絵芝居師の小川よしのりさん、絵はアーティストのライスチョウ・ジョナ・シェンさん。どちらもこの日、自身もランウェイに立ちます。つくり手が出演者でもある——この催しの性格が、開演早々に客席へ伝わります。

和装の小川よしのりさんが、舞台上で紙芝居の枠を横に置き、身振りを交えて語っている。
小川よしのりさん。舞台上で一人語りきる。
スクリーンに映された紙芝居のラストシーン。登場人物たちが「ユニバーサルランウェイ!」の文字とともに勢ぞろいしている。
ラストの一枚。物語の全員が、この日の出演者と重なる。
02

主催挨拶

Universal World Projects 代表理事・野口えみ子さんより開会のご挨拶。この催しが何のためにあるのかを、来場者と出演者の両方に向けて話しました。

赤いワンピースの野口えみ子さんがマイクを持って話している。背面の大型スクリーンには「主催挨拶 野口 えみ子」のスライド。
スクリーンは白地。人に視線が向くよう、画面のほうは主張させない。
03

ユニバーサルランウェイ — 6組

一人ずつ、紹介映像に続いてランウェイを歩き、MCとの短いやりとりを経て、それぞれの表現を披露します。モデル、ハーモニカ奏者、女優、講演家、アーティスト、紙芝居作家。肩書きはばらばらで、共通しているのは「やってみたい」を実際にやっている人であることだけです。

ピンクの衣装の松浦由奈さんがランウェイを歩いている。スクリーンには名前が投影されている。
① 松浦 由奈さん(モデル)
スクリーンに YUNA MATSUURA の紹介映像が大きく映り、その前に松浦さんが立っている。
紹介映像はご本人の活動を編集した5分ほどの映像。
松浦由奈さんが両腕を大きく広げてダンスを踊っている。背後のスクリーンには楽曲の歌詞が流れる。
得意のダンス「かわいくてごめん」。
電動車椅子の伊藤靖幸さんが、サポーターの男性とマイクを分け合って話している。
② 伊藤 靖幸さん(ハーモニカ奏者)
ドット柄のワンピースの愛澤咲月さんがマイクを持って話している。
③ 愛澤 咲月さん(女優)
野口えみ子さんが赤ちゃんを抱き、その隣で愛澤咲月さんがマイクを持って話している。
息子のそうちゃんと一緒に登場。
オレンジ色のアロハシャツの野元和明さんが、マイクを持って笑顔で話している。
④ 野元 和明さん(講演家)
人工呼吸器をつけたジョナ・シェンさんが電動車椅子で登場し、司会と向かい合っている。スクリーンには JONAH SHEN のタイトル。
⑤ ライスチョウ・ジョナ・シェンさん(アーティスト)
和装の小川よしのりさんが車椅子で舞台に上がり、スクリーンには YOSHINORI OGAWA のタイトルが映る。
⑥ 小川 よしのりさん(絵芝居師・紙芝居作家)
04

ディスカッション ── 「超短時間雇用」をどう広げるか

就労をテーマにした登壇者4名によるディスカッション。京都市 保健福祉局 障害保健福祉推進室の遠藤課長、有限会社山田木工所 代表取締役社長 山田正志さん、株式会社レーヴ 代表取締役 植田光子さん、nijigaoka,lab 代表 常元将平さん。週数時間から働ける「超短時間雇用」を、実際に受け入れている側から語っていただきました。

舞台上に4名の登壇者が並び、背面スクリーンには登壇者の顔写真と所属が並んだスライドが映っている。
行政・製造業・サービス業・研究拠点と、立場の異なる4名。
ディスカッション中の舞台全景。左端にファシリテーターの野口さん、右に4名の登壇者が座っている。
ファシリテーターは野口えみ子さん。
05

ブース出展と交流

会場後方では、ゴールド協賛6社によるブース出展。福祉事業所の手仕事やハンドメイドの作品が並びました。休憩時間には出演者と来場者が入り混じって、当日いちばん賑やかな時間帯に。

物販ブースのテーブルに木製のハープやアクセサリーが並び、スタッフが商品を紹介している。
ブースは「見る」より「話す」場所になっていました。
06

ユニバーサルコンサート

モリヤマシティバレエの皆さまによるバレエ、Yu-maさんとハピネスによるバンド演奏、そして伊藤靖幸さんのハーモニカ独奏。バレエでは、ランウェイがそのまま舞台の一部になりました。

白いレースの衣装のバレリーナが、片腕を高く掲げたポーズで静止している。
踊りながら、視線は最後まで客席へ。
3人のバレリーナがランウェイ上で踊り、背面のスクリーンにその姿が大きく投影されている。
後方席からも見えるよう、生カメラの映像をスクリーンに同時投影。
黒いTシャツのボーカルがマイクの前で目を閉じて歌っている。
ハピネスのオリジナル曲「心のヒーロー」。
バンドが演奏する背後のスクリーンに、夕景の写真と「心のヒーロー」の歌詞が映し出されている。
歌詞は全編スクリーンに。

そして、伊藤靖幸さんのハーモニカ。口元に固定したハーモニカを、息だけで鳴らします。スティーヴィー・ワンダーとビートルズの2曲。この日いちばん、会場が静まりかえった時間でした。

伊藤靖幸さんが口元に固定したハーモニカを演奏している。目を閉じた横顔。
伊藤靖幸さんがマイクに向かってハーモニカを吹いている、別アングルの写真。
スクリーンに「THANK YOU!! KEEP CHALLENGING. 一人ひとりの『やってみたい!』をこれからも応援します!」と表示され、その前でバンドが演奏している。
ハピネスからのメッセージ。この一行が、この催し全体の主旨でもあります。
07

フィナーレ ──「糸」

最後は出演者・スタッフ・来場者の全員で中島みゆきさんの「糸」を合唱。歌の途中で、未来へのバトンとして、子どもたちへ花冠が手渡されました。

スクリーンに「糸」の歌詞が映され、その前に出演者たちが横一列に並んで歌っている。
歌詞はスクリーンに。誰でも一緒に歌えるように。
ステージ上に出演者とスタッフ全員が並んだ集合写真。花束を持つ人もいる。
15時、終演。
Part 2 — つくったもの

4つの媒体を、ひとつの顔で

来場者はこの催しに、少なくとも4回出会います。チラシで知り、サイトで調べ、会場で冊子を開き、スクリーンを見る。その4回が別人の顔をしていたら、同じ催しだと認識されません。

01  Flyerディープブルー地にハートのキービジュアルを配したA4チラシ。上部に Universal Runway & Concert 2026 のタイトル。
チラシ告知・協賛依頼用。A4/2種展開
02  Pamphletパンフレット表紙。ディープブルー地に金の枠、中央にハートのキービジュアル、下部にVisionの3項目。
パンフレットA4・中綴じ8ページ/300部
03  Website公式サイトの記事ページ。ハートのキービジュアルの下に、ネイビーのイベント情報カードが配置されている。
公式サイト告知から当日案内まで運用
04  Slides投影スライドの表紙。ネイビー地に円形に切り抜いたハートのキービジュアルとタイトル。
投影スライド本番用99枚+進行キューリスト
Part 3 — 設計の考え方

「伝わる」を、どう設計したか

この催しでは、ふだんの資料づくりでは意識しないことを、いくつも考えることになりました。判断の理由がはっきり残っているものを、5つ書いておきます。

01  Visual Language

ビジュアル言語を先に決めて、全媒体をそれで貫く

最初に決めたのは、色でも書体でもなく「共通の部品」でした。ディープブルーの地、ハートのキービジュアル、人物を丸く抜くトリミング、そして全ページ上部に固定した「Universal Runway® & Concert 2026」の一行。この4つを、チラシ・パンフレット・サイト・スライドのすべてに通しています。

媒体ごとに最適なレイアウトを個別に考えるより、先に共通言語を決めてしまうほうが、結果として速く、ぶれません。つくる人が複数いる現場ではなおさらです。実際このプロジェクトでは、パンフレットが版を重ねるたびにサイトとスライドも追随しましたが、部品が決まっていたので迷いませんでした。

パンフレットの出演者紹介ページ。6名の写真が丸く切り抜かれて並び、それぞれにキャッチコピーと名前が添えられている。
パンフレット:出演者は丸型トリミング
投影スライドの出演者紹介。白地に丸く切り抜いた写真、その横に小さくキャッチ、大きく名前。
スライド:同じ丸型、同じ並び順
02  Background Color

地の色で、「いま何を見る時間か」を伝える

投影スライド99枚を、地の色で3つのモードに分けました。ネイビーは進行——主催者の声で場を動かす時間。白は人——出演者が主役で、画面は名前を出すだけ。黒は映像——暗転に溶けて、スクリーンの境目を消す時間です。

観客は、文字を読む前に色で気づきます。「白になった、次は人だ」「黒になった、映像が始まる」。読ませずに伝わる経路をひとつ持っておくと、進行そのものが速くなります。オペレーターにとっても、いま自分がどのモードにいるかが一目で分かります。

ネイビー=進行
ネイビー地の投影スライド。ディスカッションタイムのタイトルと、登壇者4名の丸い写真が並ぶ。
白=人
白地の投影スライド。丸く切り抜いた出演者の写真と、キャッチコピー、大きな名前。
黒=映像
黒地の投影スライド。VIDEO の見出しと、再生する動画ファイル名が表示されている。
03  Interstitial

「何も映さない時間」にこそ、映すものを用意する

本番でいちばん事故に見えるのは、トラブルそのものではなく、前の画面が残り続けることです。出演者が退場したのに名前が出たまま、映像が終わったのに黒画面のまま。数秒でも、客席には長く感じられます。

そこで、転換のたびに挟む待機スライドを用意しました。ランウェイの間は「UNIVERSAL RUNWAY」、コンサートの間は「UNIVERSAL CONCERT」。何も見せなくていい時間を、空白ではなく催しの署名で埋めるという考え方です。結果として、99枚のうち十数枚がこの待機スライドになりました。

ネイビー地の待機スライド。中央に円形のハートのキービジュアル、その下に UNIVERSAL RUNWAY の文字と「誰もが輝ける未来へ」。
転換用の待機スライド。ここに戻れば必ず正しい、という安全地帯でもあります。
04  Expectation

情報ではなく、受け手の「期待値」を設計する

当初のパンフレットには、進行表どおりの時刻が並んでいました。「14:31 ディスカッションタイム」。入稿の直前、主催の野口さんからこう言われます。「障がい者のイベントなので、時間どおりに行くことのほうが稀です」

分単位の時刻を紙に刷ると、それは約束として読まれます。5分押しただけで「遅れている」という体験になる。けれどこの催しでは、車椅子の乗り降りにも、マイクの受け渡しにも、その人のぶんの時間がかかります。それは事故ではなく前提です。

そこで確定時刻は受付開始・開演・終演の3点だけに絞り、あとはすべて「約◯分」に置き換えました。情報を減らしたのではなく、期待値のほうを設計しなおしたという判断です。紙もサイトも同じ表記に揃えています。

公式サイトのプログラム表。12:30、13:00、15:00頃、〜17:00 の4つだけが時刻表記で、途中の項目はすべて「約3分」「約35分」「約20分」と所要時間で書かれている。
公式サイトのプログラム表。時刻は4点、あとは所要時間。下に「確定しているのは開場・開演・終演です」と注記も入れています。
05  Redundancy

ひとつの情報に、ふたつ以上の経路を用意する

ユニバーサルデザインというと「配慮を足すこと」だと思われがちですが、実務でやっているのはもっと単純で、同じ内容に届き方を複数つくることです。誰にとっての配慮かを事前に特定しきれない以上、経路を増やすほうが確実に効きます。

歌は耳から入るだけでなく、歌詞をスクリーンに出す。舞台は目で見るだけでなく、生カメラの映像を同時投影して、後方席や車椅子の低い視線からも見えるようにする。出演者の情報は、紹介映像・MCの言葉・パンフレット・サイトの4経路。協賛企業は、紙のロゴからQRコードでサイトへ、サイトから応援コメント動画へ——紙の限られたスペースを、企業紹介ではなく企業への動線として使いました。

公式サイトの協賛企業一覧。ランクごとにカードの大きさが変わり、各社にロゴ・社名・業種と「応援コメント」「協賛理由」の動画リンクが付いている。
サイト:1社1枠。ランクでカードの大きさを変えつつ、掲載項目は全社そろえる
パンフレットの協賛企業ページ。メインスポンサー11社のロゴが並び、下部にQRコードが配置されている。
紙:ロゴを並べ、下のQRからサイトの動画へ
Part 4 — 当日

台本に書けなかったことのために、書けることは全部書いておく

本番、私はスライド投影と音響のオペレーションを担当しました。

事前にやったことは、要するに当日の判断を減らす作業です。99枚すべてのノート欄にMC台本と操作メモを入れ、当日配るキューリストはそのノートから自動生成しました。人が手で転記すると、直前の変更のたびに紙とスライドがずれていく。生成にしておけば、スライドを直せばキューリストも必ず一緒に直ります。映像は15本ありましたが、他の要素と同居させず1動画=1スライドに分け、オペレーターが「送る/再生する」以外の判断をしなくていいようにしました。前日には、出演者の紹介映像6本が無音であることに気づいて、映像ごとにフリー音源から曲を選び、6本とも音量を揃えて付け直しています。

ここまで詰めておくと、本番では台本に書けないことに手が回ります

入場と退場は、音量を上げました。
会場の温度は、音でつくれる。

出演者がランウェイに出る瞬間と、はけていく瞬間。ここで音楽を大きくすると、拍手が出やすくなります。客席が「いま拍手する場面だ」と身体で分かる。逆に、伊藤さんのハーモニカの前は、音を完全に落として間をつくりました。どの曲をどこで、どのくらいの音量で、というのは、その日の客席の反応を見ながら決めています。事前に決め打ちできる種類のものではありません。

紙やスライドの設計は、当日の現場から選択肢を減らす仕事です。けれど減らす目的は、機械のように進めることではなくて、人が判断すべきところに判断力を残すことでした。今回でいえば、それが音でした。

「伝わる」は、紙とスクリーンだけでは完成しません。当日その場にいて、空気を見て、あと一手を足せるかどうか。そこまで含めて設計だと、今回あらためて思いました。

スクリーンに「THANK YOU!! KEEP CHALLENGING.」と表示され、その前でハピネスのメンバーが演奏している。
一人ひとりの「やってみたい!」をこれからも応援します。

開催概要

名称
Universal Runway® & Concert 2026「誰もが輝ける未来へ」
日時
2026年9月13日(日)13:00 開演/15:00 終演(〜17:00 交流タイム)
会場
京都リサーチパーク 4号館 地下 バズホール
主催
株式会社マナーコンシェル/伸滋Design
運営
Universal World Projects(株式会社マナーコンシェル/伸滋Design/株式会社五力/株式会社アイ・オクトーバー)
助成
下京区まちづくりサポート事業「SHIMOGYO+GOOD」令和8年度採択事業
出演
松浦由奈/伊藤靖幸/愛澤咲月&そうちゃん/野元和明/ライスチョウ・ジョナ・シェン/小川よしのり/モリヤマシティバレエ/Yu-ma & ハピネス
担当
チラシ・パンフレット制作、公式サイト制作・運用、当日投影資料制作、当日の映像・音響オペレーション(伸滋Design)

ご来場、ご出演、ご協賛いただいた皆さま、ありがとうございました。
イベントの告知物から当日の進行設計まで通してご相談いただけます。お気軽にどうぞ。
伸滋Design 村中 伸滋

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この記事を書いた人

村中 伸滋 伸滋Design 代表

「伝わる」を科学するプレゼンテーションデザイナー / 外部CSO。認知科学・行動経済学・神経科学の知見をコミュニケーション設計に応用し、経営層の戦略プレゼンから学会発表・研究費申請書まで支援。国際学術誌 ChemPhotoChem の表紙アート採用、大学学長の国際連携プレゼンテーション制作支援などの実績。

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