ストーリーを科学する

複雑性伝達の倫理と「分かりやすさ」のパラドックスに関する包括的研究報告書

1. 序論:単純化の誘惑とその代償

1.1 「分かりやすさ」の覇権と現代の病理

現代のビジネス、教育、そして公共政策のコミュニケーションにおいて、「分かりやすさ(Clarity)」と「単純化(Simplification)」は、疑う余地のない至上の価値として君臨している。スティーブ・ジョブズの製品発表における極限まで削ぎ落とされたミニマリズムや、TED Talksに代表される「18分で世界を変えるアイデア」を語るフォーマットは、情報を効率的に伝達する黄金律として定着した。プレゼンテーションの指南書は、「KISSの原則(Keep It Simple, Stupid)」を説き、聴衆の認知負荷を最小限に抑えることを推奨する。スライドからノイズを除去し、複雑な因果関係を直線的なストーリーに再構築し、結論を断定的に提示することが、優れたプレゼンターの条件とされる。

しかし、この「単純化への信仰」は、現実世界の複雑性(Complexity)や不確実性(Uncertainty)を隠蔽し、受け手に「分かったつもり」という危険な万能感を与える温床となっている。これを本報告書では「単純化のパラドックス」と呼ぶ。情報を単純化することは、シグナルを明確にする一方で、文脈という重要な情報を切り捨てる行為に他ならない。特に、気候変動、金融システム、公衆衛生といった相互依存的なシステム(Complex Adaptive Systems)を扱う際、過度な単純化は単なる「不正確さ」にとどまらず、破滅的な意思決定や社会的分断を招く要因となる。

1.2 本報告書の目的と構成

本報告書は、「プレゼンを科学する」という視座から、単純化された分かりやすさの危険性と、複雑さを複雑なまま伝えることの重要性について、多角的な学術的知見を用いて検証するものである。物理学や経済学における理想モデルの失敗事例、認知科学における「説明深度の錯覚(IOED)」、そしてCOVID-19パンデミックや金融危機におけるコミュニケーションの分析を通じ、プレゼンテーションにおける「単純化」と「正確性」のバランス、そして情報の送り手が負うべき倫理的責任(Epistemic Ethics)について考察する。

最終的に、我々は「単純か複雑か」という二項対立を超え、不確実性を受容しながら共に意味を構築する(Sensemaking)ための、新たなコミュニケーションの枠組みを提言する。これは、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代におけるリーダーシップとプレゼンテーションの再定義である。

2. 認知科学的基盤:脳はいかにして世界を縮減するか

なぜ我々は単純な説明を好み、複雑な説明を拒絶するのか。そのメカニズムを理解するためには、人間の認知アーキテクチャに深く根ざしたバイアスと限界を直視する必要がある。

2.1 説明深度の錯覚(The Illusion of Explanatory Depth: IOED)

人々は、自分が世界の仕組みを理解している度合いを、体系的に過大評価している。この現象は、イェール大学の認知科学者Leonid RozenblitとFrank Keilによって「説明深度の錯覚(Illusion of Explanatory Depth: IOED)」と名付けられた1

2.1.1 錯覚のメカニズムと実験的証拠

RozenblitとKeilの研究(2002)では、被験者に対して「トイレの洗浄機構」「ヘリコプターの飛行原理」「ファスナーの仕組み」といった日常的な機械的システムの理解度を自己評価させた。多くの被験者は、当初「自分はよく理解している(高い評価)」と回答した。しかし、その後「その仕組みを図解し、ステップバイステップで説明してください」と求められると、大半の被験者が説明に窮し、再度の自己評価では理解度を大幅に下げた3

この実験が示唆するのは、我々が持つ「知識」の多くが、詳細な因果関係の連鎖ではなく、極めて浅い「直感的な理論(Intuitive Theories)」や「抽象的な機能の理解」に留まっているという事実である2。我々は「レバーを回せば水が流れる」という入力と出力の関係(ブラックボックス的な理解)を、「メカニズムの理解」と混同しているのである。

2.1.2 プレゼンテーションにおけるIOEDの二重リスク

ビジネスや政策のプレゼンテーションにおいて、IOEDは以下の二つの方向でリスクを増幅させる。

  1. 聴衆側のリスク:過信と極性化「分かりやすい」プレゼンテーションは、聴衆のIOEDを強化する。複雑な社会問題(例:税制改革、医療制度)が単純な因果関係(「AをすればBになる」)として提示されると、聴衆はその問題を「完全に理解した」と錯覚する。この錯覚は、自身の意見に対する過剰な自信(Overconfidence)を生み、異なる意見を持つ他者への不寛容や政治的な極性化(Polarization)を助長することが、Fernbachら(2013)の研究によって示されている4。逆に、政策の詳細なメカニズムを説明させられると、人々は自身の無知を自覚し、極端な意見が中和される傾向がある6。
  2. プレゼンター側のリスク:抽象的解釈の罠プレゼンター自身もまた、専門分野外の事象や、自組織の複雑な課題に対してIOEDに陥りやすい。特に、具体的な「How(どのように機能するか)」ではなく、抽象的な「Why(なぜ重要か)」や「What(何であるか)」に焦点を当てた解釈レベル(Abstract Construal Style)を採用するとき、人は自身の理解度を過大に見積もる傾向がある1。これは、経営陣が現場の複雑なオペレーション上の課題を軽視し、実行不可能な戦略を「シンプルで力強いビジョン」として発表してしまう背景にある認知メカニズムである。

2.2 還元的バイアス(Reductive Bias)と認知負荷理論

人間の脳は、進化的に「複雑さ」を「リスク」として処理するように配線されている。無秩序で複雑な環境からパターンを見出し、情報をカテゴリー化して処理することは、生存に不可欠な能力であった。しかし、現代社会においてこの本能は「還元的バイアス(Reductive Bias)」として機能し、複雑な事象を単一の原因や単純な二項対立に押し込めようとする誤謬を引き起こす8

2.2.1 認知負荷の種類とプレゼンテーションの設計

オーストラリアの教育心理学者John Swellerが提唱した認知負荷理論(Cognitive Load Theory)は、プレゼンテーションにおける「単純化」の議論に重要な枠組みを提供する。Swellerは、学習や理解における認知的リソースには限界があり、それは以下の3種類の負荷に配分されるとした10

負荷の種類定義プレゼンテーションにおける意味対処法
内在的負荷 (Intrinsic Load)課題やトピックそのものが持つ本来的な難易度・複雑さ。要素間の相互作用(Element Interactivity)の数に依存する。物理学の理論や市場の動向など、内容自体の複雑さ。これをゼロにすることは「情報の変質」を意味する。削減するのではなく、管理する。情報の分節化(Chunking)や順序立てた提示(Sequencing)で対応する。
外在的負荷 (Extraneous Load)情報の提示方法や教材のデザインによって生じる、学習に不要な負荷。読みにくいフォント、無意味なアニメーション、話と矛盾する図解、冗長な説明。徹底的に排除する。デザインの洗練、ノイズの削減、一貫性の確保。
学習関連負荷 (Germane Load)新しい情報を既存の知識構造(スキーマ)に統合し、理解を深めるために使われる有益な負荷。聴衆が「なるほど」と膝を打ち、自分の経験と結びつける知的作業。最大化するように促進する。比喩、対比、問いかけを用いる。

多くの「悪い単純化」は、外在的負荷を減らす努力を怠り、代わりに内在的負荷を不当に削除してしまうことで発生する。これは聴衆にとって「分かりやすい」と感じられるが、それは単に認知的努力を放棄させた結果であり、真の理解(スキーマの構築)には至っていない。プレゼンテーションの科学における最大の課題は、内在的負荷を維持したまま、外在的負荷を極小化し、学習関連負荷を最大化するデザインを見出すことにある。

2.3 確証バイアスと「心地よい単純さ」

単純化された情報は、しばしば聴衆の既存の信念やステレオタイプと合致しやすいため、確証バイアス(Confirmation Bias)を強化する13。脳にとって、既存の信念体系と矛盾しない情報は処理コストが低く、ドーパミン報酬系を刺激する「心地よい」ものである。逆に、複雑でニュアンスに富んだ情報(「Aは正しいが、特定の条件下ではBも正しい」といった情報)は、認知的不協和(Cognitive Dissonance)を引き起こし、不快感をもたらす。

ポピュリスト的な政治演説や、”銀の弾丸”を謳うビジネスソリューションが支持されるのは、それらが聴衆の認知的不協和を回避し、還元的バイアスに迎合するためである。しかし、この「心地よさ」こそが、現実の複雑な問題(Wicked Problems)の解決を遠ざけ、組織や社会を誤った方向へ導く元凶となる。

3. 理想モデルの罠:物理学と経済学における失敗学

科学や経済学の分野では、複雑な現象を説明するために「モデル」が用いられる。モデルとは本質的に現実の単純化(理想化)であるが、その適用範囲や限界(Boundary Conditions)を忘却したとき、モデルは凶器となる。

3.1 物理学:「球形の牛」と理想気体の法則の誤用

理論物理学には「球形の牛(Spherical Cow)」という有名なジョークがある。牛乳の生産量を上げる方法を相談された理論物理学者が、「まず、牛を真空中の球体と仮定します」と切り出すというものである15。これは、物理学者が計算を可能にするために、現実の複雑な詳細(牛の形状、生理機能、摩擦、空気抵抗)を捨象し、極端な単純化(Idealization)を行う傾向を自嘲したメタファーである。

3.1.1 理想気体の法則の境界条件

このメタファーは、単なる笑い話ではない。例えば、熱力学における「理想気体の法則(PV=nRT)」は、気体分子自身の体積や分子間の相互作用を無視できる条件下(高温・低圧)では極めて有用な近似である17。しかし、高圧環境や極低温、あるいは複雑な化学反応を伴うリアクター内などの「実在気体」の挙動を予測する際にこの単純な法則を適用すると、深刻な誤差が生じ、爆発事故やプラントの設計ミスにつながる可能性がある。

さらに、医学分野においてこの法則を人体の呼吸生理に安易に適用することの危険性も指摘されている。肺胞でのガス交換は、血流(Perfusion)と換気(Ventilation)の複雑なバランス(V/Q比)や、肺胞のデッドスペース、病的障壁といった要因に支配されており、理想気体の単純なモデルでは説明しきれない19。単純化されたモデルを、生命に関わる複雑系(Complex Systems)に無批判に適用することは、文字通り致命的な結果を招く。

3.2 経済学:ホモ・エコノミクスと金融危機の教訓

物理学以上に「単純化されたモデル」が現実世界に破滅的な影響を与えたのが、経済学と金融工学の分野である。新古典派経済学の基礎となる「ホモ・エコノミクス(合理的経済人)」モデルは、人間を「完全な情報を持ち、自己利益を最大化するように合理的に行動する主体」と定義した20

3.2.1 2008年金融危機とValue at Risk (VaR) の罪

この還元主義的アプローチが最も顕著に失敗した事例として、2008年の世界金融危機におけるリスク管理指標「Value at Risk (VaR: バリュー・アット・リスク)」の乱用が挙げられる。VaRは、ある一定の確率(例:99%)で発生しうる最大損失額を「たった一つの数字」で表現できるため、金融機関の経営陣にとって極めて「分かりやすい」ツールとして歓迎された22

しかし、このモデルには致命的な単純化が含まれていた。

  1. 正規分布の仮定: 市場の変動が正規分布(ベルカーブ)に従うと仮定しており、現実の市場で頻発する「ファット・テール(Fat Tails)」すなわち極端な価格変動(ブラックスワン)を過小評価していた23
  2. 相関の固定化: 危機時に資産間の相関が急上昇し、分散投資の効果が消滅するメカニズムを反映していなかった。

3.2.2 経営陣への「偽りの安心感」

ヘッジファンドマネージャーのDavid Einhornは、VaRを「事故が起きる時以外は常に作動するエアバッグ」と酷評した23。経営陣や規制当局は、VaRという「分かりやすい数字」を見ることで、リスクを完全にコントロールしているという「偽りの安心感(False Sense of Security)」に浸り、その結果、破滅的なレバレッジを積み上げてしまった25

さらに、JPモルガンの「ロンドン・クジラ」事件(2012年)では、リスク管理部門がVaRモデルの計算式を変更し、見かけ上のリスク値を半減させることで、巨額の損失ポジションを隠蔽しようとした27。これは、単純化された指標が、現実を理解するツールから、現実を歪曲し正当化するツールへと変質した典型例である。

Talebは、VaRのような指標を「シャルラタン(いかさま師)の科学」と呼び、複雑なシステムにおけるリスクを単一の数字に還元することの認識論的誤謬(Epistemic Arrogance)を激しく批判している24。プレゼンテーションにおいて「リスクは管理されています」と断言するために単純化されたグラフを見せることは、実質的に嘘をついているのと同義である場合があるのだ。

4. 単純化の倫理学:嘘とパターナリズムの境界線

プレゼンテーションにおいて、専門家が非専門家に対して情報を単純化して伝える行為は、どこまで許容されるのか。それは教育的な配慮なのか、それとも知的な欺瞞なのか。

4.1 「子供への嘘(Lie-to-Children)」と教育的足場かけ

科学教育やコミュニケーションの分野では、「子供への嘘(Lie-to-Children)」という概念が存在する30。これは、初学者が概念を掴めるようにするために、厳密には正しくないが理解可能な説明(メタファーや簡略化されたモデル)を用いることを指す。例えば、原子の構造を太陽系のように電子が軌道を回るモデル(ボーア・モデル)で教えることは、量子力学的には不正確だが、教育的なステップとしては有効とされる。

この手法は、教育心理学における「スキャフォルディング(足場かけ)」として正当化される31。重要なのは、学習者の理解が進むにつれて、徐々に「嘘(単純化されたモデル)」を修正し、より正確で複雑なモデルへと導く(Progressive Disclosure)というプロセスが前提にある点だ33

しかし、ビジネスや政治のプレゼンテーションでは、この「後の修正」が行われないことが多い。聴衆は永遠に「子供」として扱われ、単純化されたメタファー(例:「国の財政」を「家計」に例える等)が真実として定着してしまう。これは「教育」ではなく「操作」に近い。

4.2 認識的パターナリズム(Epistemic Paternalism)

哲学者のAlvin GoldmanやKristoffer Ahlstrom-Vijらは、情報の送り手が受け手の知的利益(Cognitive Well-being)のために、意図的に情報へのアクセスを制限したり、特定の結論へ誘導したりする行為を「認識的パターナリズム(Epistemic Paternalism)」と呼んで議論している34

認識的パターナリズムが正当化されるためには、以下の条件が必要とされる:

  1. 干渉(Interference): 受け手の探求プロセスに介入すること。
  2. 非協議(Non-consultation): 受け手の同意を得ずに行うこと。
  3. 改善(Improvement): その介入によって、受け手がより真実に近い信念を持てる、あるいは誤った信念を回避できること。

しかし、現代社会において、専門家が「一般市民には複雑すぎて理解できないだろう」と判断し、不確実性を隠蔽して「断定的な結論」だけを提示することは、長期的には専門家への信頼(Public Trust)を毀損するリスクが高い。特に、科学的な知見が日々更新される状況(例:パンデミック)において、過去の「単純化された断定」が覆されたとき、聴衆はそれを「科学のプロセス」ではなく「嘘」と認識するからである。

5. 危機管理におけるケーススタディ:COVID-19と「数字」の独り歩き

COVID-19パンデミックは、科学的情報の「単純化」と「不確実性」の扱いがいかに社会的な影響を与えるかを示す、巨大な実験場となった。

5.1 集団免疫とR0の誤解:英国政府の失敗

2020年初頭、英国政府とその科学顧問団(パトリック・バランス首席科学顧問ら)は、「集団免疫(Herd Immunity)」や「基本再生産数(R0)」という疫学用語を用いて戦略を説明しようとした37。しかし、これらの専門用語は文脈を欠いたままメディアによって拡散され、激しい社会的バックラッシュを招いた。

5.1.1 R0の単純化と誤用

R0(一人の感染者が何人に感染させるか)は、感染拡大のポテンシャルを示す重要な指標だが、それはあくまで「平均値」に過ぎない。COVID-19の特徴は、多くの人は誰にも感染させない一方で、少数の感染者が大量に感染させる(スーパースプレッダーイベント)という「過分散(Overdispersion)」にある(k値によって表される)39。

しかし、政府やメディアはR0を単一の確定的な数値として扱い、「R0が1を下回れば安全」という単純なメッセージを繰り返した。これにより、局所的なクラスター発生のリスクや、行動変容の細かなニュアンスが見過ごされ、市民の間に誤ったリスク認識が広がった41。

5.1.2 集団免疫「60%」という閾値の呪縛

さらに深刻だったのは、「人口の約60%が感染すれば集団免疫が達成される」という数値の提示である38。この「60%」という数字は、人口が均質に混ざり合うという単純な数理モデルに基づく理論値に過ぎなかったが、メディアや一般市民はこれを「60%までは感染してもよい(政府は高齢者を見捨てるつもりだ)」という政策目標として受け取った37。

科学的な「閾値(Threshold)」が、政策的な「目標値(Target)」として誤読された背景には、モデルの前提条件(Assumptions)や不確実性を省き、数字だけを「分かりやすく」伝えたコミュニケーションの失敗がある。結果として、英国政府は方針転換を余儀なくされ、科学的助言に対する国民の信頼は大きく揺らいだ44。

5.2 コミュニケーションスタイルの対比:メルケルとアーダーン

一方、複雑さと不確実性を巧みに扱ったリーダーも存在した。

5.2.1 アンゲラ・メルケルの「科学的講義」

物理学の博士号を持つドイツのメルケル首相は、記者会見でR0(再生産数)の概念を、対数関数的なグラフのロジックを用いて詳細に解説した46。彼女は「分かりやすいスローガン」に頼るのではなく、感染がわずかに加速するだけで医療崩壊に至るメカニズムを、論理的かつ冷静に説明した。この「国民を知的パートナーとして扱う」姿勢(Evidence and Logic)は、ドイツ国民の高い理解と協力を引き出した48

5.2.2 ジャシンダ・アーダーンの「ネガティブ・ケイパビリティ」

ニュージーランドのアーダーン首相(当時)は、不確実な状況下での「意味づけ(Sensemaking)」において卓越していた。彼女は「分からないこと(未来の予測)」を正直に認めつつ、Facebook Liveなどの親密なチャネルを通じて、政府の意思決定プロセスや自身の不安(「母親としての懸念」など)を共有した49。

これは、詩人ジョン・キーツが提唱した「ネガティブ・ケイパビリティ(不確実さや疑念の中に留まる能力)」の実践である51。リーダーが全知全能(Positive Capability)を演じるのではなく、不確実性を受容し、その中で共に進む姿勢を見せることは、危機における信頼構築の鍵となる。

6. 複雑さを伝えるための方法論:VUCA時代のプレゼンテーション技術

では、我々はどのようにして「単純化の罠」を避け、複雑さを損なわずに伝えることができるのか。認知科学、デザイン、システム思考の知見を統合した実践的アプローチを提案する。

6.1 スキャフォルディングと段階的開示(Progressive Disclosure)

「分かりやすさ」と「複雑さ」はトレードオフではない。「順序」の問題である。UIデザインにおける「段階的開示(Progressive Disclosure)」の原則をプレゼンテーションに応用する33

  1. レイヤー1:直感的な全体像(The Big Picture)
    • まずは単純化されたモデルやメタファーを提示し、聴衆のメンタルモデルの「足場(Scaffold)」を作る31。ここでは「内在的負荷」を一時的に下げ、トピックへのアクセスを確保する。
    • :「経済はエンジンのようなものです(燃料と出力の関係)」
  2. レイヤー2:メカニズムと例外(Mechanism & Exception)
    • 次に、そのモデルが機能する仕組みと、機能しない条件(境界条件)を開示する。「子供への嘘」を修正するフェーズである。
    • :「ただし、このエンジンは人間の心理で動くため、燃料(資金)を入れても動かないことがあります(流動性の罠)」
  3. レイヤー3:データの不確実性と深層(Uncertainty & Depth)
    • 最後に、実際のデータ、ばらつき、信頼区間(Confidence Intervals)を提示し、現実の複雑な様相を見せる。
    • :「予測モデルの信頼区間はこれだけ広く、最悪のシナリオでは以下のリスクがあります」

このステップを踏むことで、聴衆は認知的にパンクすることなく、徐々に深い理解へと導かれる。

6.2 箇条書きの呪縛からの脱却:ナラティブとデータストーリーテリング

Edward Tufteは、PowerPointの標準的なスタイル(箇条書きと階層構造)が、思考を断片化し、複雑な因果関係を「リスト」に還元してしまうと批判した54。複雑なシステム(Wicked Problems)を記述するには、主語と述語のある「完全な文章(Full Sentences)」と、物語(Narrative)の構造が必要である。

6.2.1 データストーリーテリングの技術

Cole Nussbaumer Knaflicらが提唱するデータストーリーテリングは、単にグラフを見せるだけでなく、そのデータが生まれた背景、分析のプロセス、そしてそこに含まれるノイズや不確実性を「物語」として語る手法である56

  • 不確実性の視覚化: 平均値の棒グラフだけでなく、エラーバーや信頼区間の帯(Band)を表示し、予測の「幅」を可視化する58
  • 文脈の統合: グラフのタイトルや注釈に、解釈のキーとなる文脈(「なぜこの時期に急上昇したか」)を直接書き込み、認知負荷(外在的負荷)を下げる。

6.3 システム思考と「厄介な問題(Wicked Problems)」の可視化

線形的な論理構成(ピラミッド原則など)は、要素還元的な問題解決には有効だが、相互依存性が高い「厄介な問題(貧困、気候変動、組織文化など)」の表現には限界がある60。

これらを伝えるには、システム思考(Systems Thinking)のアプローチを取り入れ、因果ループ図(Causal Loop Diagrams)などを用いて、「Aが増えればBが増え、それがAを抑制する」といった動的な関係性を描く必要がある62。

  • アナログ・プランニングの重要性: Garr Reynolds(Presentation Zen)が推奨するように、デジタルツールに向かう前に、ホワイトボードや付箋を使って要素間の複雑な関係を物理的にマッピングし、全体像(Gestalt)を把握するプロセスが不可欠である63
  • ステークホルダー・マッピング: 異なる利害関係者間の対立やシナジーを可視化し、単一の「正解」ではなく、複数の視点が存在することを示す65

7. 結論:ニュアンスある明晰さ(Nuanced Clarity)へ

「プレゼンを科学する」という探求の終着点は、単純化による安易な「分かりやすさ」の追求ではなく、複雑な現実に対する知的誠実さ(Intellectual Honesty)の回復である。

本報告書の分析から導かれる結論は以下の通りである。

  1. 単純化は「目的」ではなく「入り口」である: 単純化は聴衆を招き入れるための手段に過ぎない。プレゼンターの責任は、そこから徐々に複雑性の梯子を登らせ、現実の不確実性と向き合える地点まで連れて行くことにある。
  2. 不確実性の共有は信頼を生む: VaRやR0の事例が示すように、不確実性を隠蔽して断定することは、長期的には破滅的な信頼失墜を招く。リーダーはネガティブ・ケイパビリティを発揮し、「何が分かっていて、何が分かっていないか」を明確に語るべきである。
  3. モデルの限界(境界条件)を常に提示せよ: 物理学や経済学のモデルを用いる際は、それが適用可能な条件と、適用してはならない条件(「球形の牛」にならないための条件)をセットで提示しなければならない。
  4. 「構造化された複雑性」のデザイン: 箇条書きや断片的なスライドを超え、ナラティブ、段階的開示、システム図、不確実性の可視化といった高度な技法を駆使して、「複雑さを複雑なまま、しかし理解可能な形で」手渡す技術を磨く必要がある。

真に優れたプレゼンテーションとは、聴衆に「簡単な答え」を与えて思考停止させるものではなく、聴衆の知性を信頼し、共に複雑な世界を航海するための「コンパス」と「地図」を提供する行為なのである。


データ・統計・比較表

表1: 認知負荷理論に基づくプレゼンテーション設計指針

負荷の種類定義プレゼンテーションでの発生源推奨される対処法(科学的アプローチ)
内在的負荷
(Intrinsic)
トピック自体の複雑さ・専門用語
・要素間の相互作用の多さ
・概念の抽象度
削除しない(情報の劣化を防ぐため)。
代わりに分節化(Chunking)と段階的開示で管理する。
事前知識(スキーマ)の活性化を行う。
外在的負荷
(Extraneous)
提示方法による不要な負荷・読みにくいスライドデザイン
・冗長なアニメーション
・話者とスライドの不一致(Split-attention effect)
徹底的に削除する
視覚情報と聴覚情報の統合(Dual Coding)。
物理的配置の整理。
学習関連負荷
(Germane)
理解とスキーマ構築への努力・深い思考を促す問い
・メタファーの解釈
・事例の適用
最大化する
比喩、対比、自分事化(Self-explanation)を促す。
「なぜそうなるか」のメカニズムを説明する。

Source: 10に基づき作成

表2: リスク管理指標の変遷と「単純化」の失敗

時代/指標特徴前提としていた単純化(モデル)現実世界での失敗(Failures)教訓
Pre-2008
VaR (Value at Risk)
99%の確率での最大損失額を単一の数字で表示・正規分布(ベルカーブ)
・過去の相関関係の継続
・流動性の永続
・テールリスク(極端事象)の無視
・危機時の相関「1」への収束
・経営陣への偽りの安心感
「エアバッグは事故の時こそ作動しなければ意味がない」(Einhorn)23
単一指標への依存は危険。
Post-2008
Stress Testing / Expected Shortfall
「もし~が起きたら」というシナリオベースの損失予測・特定の極端なシナリオ(不完全だが具体的)
・テール部分の平均損失
・シナリオの想像力の欠如
・モデルの複雑化によるブラックボックス化
モデルは予測ツールではなく、対話ツール(Sensemaking)として使うべき。
複数の指標を併用する。

Source: 22に基づき作成

表3: 危機におけるコミュニケーションスタイルの比較 (COVID-19)

リーダー / 政府コミュニケーションの特徴扱った科学的概念結果・反応
Boris Johnson (UK)
& 科学顧問団
・スローガン重視(”Stay Home”)
・初期の「集団免疫」言及による混乱
・科学的根拠の「つまみ食い」
・集団免疫 (Herd Immunity)
・R0 (基本再生産数)
・「政府は国民を実験台にしている」とのバックラッシュ37
・政策への不信感と混乱
Angela Merkel (DE)・「科学講義」スタイル
・論理的メカニズムの説明
・感情より理性に訴える
・R0と感染者数の対数関数的増加
・医療崩壊の閾値
・高い信頼とコンプライアンス48
・「説明されれば理解できる」という市民への敬意
Jacinda Ardern (NZ)・共感と透明性(Empathy & Transparency)
・不確実性の共有(Negative Capability)
・Facebook Liveでの対話
・除去戦略 (Elimination Strategy)
・警戒レベルシステム
・「500万人のチーム」という連帯感の醸成50
・不安の低減と協力的な行動変容

Source: 37に基づき作成


(Note: Citations in the text follow the format as per the provided research snippets. The analysis integrates theories from cognitive science, economics, and communication studies to address the prompt’s requirements.)

引用文献

  1. Missing the Trees for the Forest: A Construal Level Account of the Illusion of Explanatory Depth – NYU Stern,  https://pages.stern.nyu.edu/~aalter/jpspioed.pdf
  2. The misunderstood limits of folk science: an illusion of explanatory depth – PMC,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3062901/
  3. Broad effects of shallow understanding: Explaining an unrelated phenomenon exposes the illusion of explanatory depth | Judgment and Decision Making – Cambridge University Press,  https://www.cambridge.org/core/journals/judgment-and-decision-making/article/broad-effects-of-shallow-understanding-explaining-an-unrelated-phenomenon-exposes-the-illusion-of-explanatory-depth/9B9B8927C3E530EBCF0453504730E3F3
  4. Full article: I know that I know nothing: Can puncturing the illusion of explanatory depth overcome the relationship between attitudinal dissimilarity and prejudice?,  https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/23743603.2018.1464881
  5. To Fight Polarization, Ask, “How Does That Policy Work?” – Behavioral Scientist,  https://behavioralscientist.org/to-fight-polarization-ask-how-does-that-policy-work/
  6. Political Extremism Is Supported by an Illusion of Understanding | Harvard Kennedy School,  https://www.hks.harvard.edu/publications/political-extremism-supported-illusion-understanding
  7. Is political extremism supported by an illusion of understanding? – PubMed,  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35533417/
  8. 4 Ways to Avoid AI Bias Amplification – Psychology Today,  https://www.psychologytoday.com/us/blog/harnessing-hybrid-intelligence/202503/4-ways-to-avoid-ai-bias-amplification
  9. Reductive Bias – Cedars Hill Group Knowledge Base – Obsidian Publish,  https://publish.obsidian.md/cedarshillgroup/Heuristics/Reductive+Bias
  10. Cognitive load – Wikipedia,  https://en.wikipedia.org/wiki/Cognitive_load
  11. Cognitive Load Theory: A Teacher’s Guide – Structural Learning,  https://www.structural-learning.com/post/cognitive-load-theory-a-teachers-guide
  12. Cognitive Load: A Fundamental Key to Student Learning – The Scholarly Teacher,  https://www.scholarlyteacher.com/post/cognitive-load-a-fundamental-key-to-student-learning
  13. The Illusion of Explanatory Depth – The Decision Lab,  https://thedecisionlab.com/biases/the-illusion-of-explanatory-depth
  14. The Impact of Cognitive Biases on Professionals’ Decision-Making: A Review of Four Occupational Areas – NIH,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8763848/
  15. Spherical cow – Wikipedia,  https://en.wikipedia.org/wiki/Spherical_cow
  16. What is the spherical cow reference? Why cows? What is its origin? – Reddit,  https://www.reddit.com/r/PhysicsStudents/comments/14byxf6/what_is_the_spherical_cow_reference_why_cows_what/
  17. Applications of Ideal Gas Law – GeeksforGeeks,  https://www.geeksforgeeks.org/chemistry/applications-of-ideal-gas-law/
  18. Empirical Math Model: Ideal Gas Law | Department of Energy,  https://www.energy.gov/ne/articles/empirical-math-model-ideal-gas-law
  19. Ideal Gas Behavior – StatPearls – NCBI Bookshelf – NIH,  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK441936/
  20. Neoclassical Economics Failed. It’s Time for a New Paradigm – Evonomics,  https://evonomics.com/traditional-economics-failed-heres-a-new-blueprint/
  21. Government failure : a primer in public choice / Gordon Tullock, Arthur Seldon, and Gordon L. Brady,  https://wordlist.narod.ru/Government-Failure.pdf
  22. VaR before and after the 2008 crisis – MidhaFin,  https://www.midhafin.com/var-before-and-after-2008-crisis
  23. Value at risk – Wikipedia,  https://en.wikipedia.org/wiki/Value_at_risk
  24. Against Value-at-Risk: Nassim Taleb Replies to Philippe Jorion,  https://www.fooledbyrandomness.com/jorion.html
  25. A False Sense of Security: Lessons from the Crisis for Bank Management and Regulators,  https://www.researchgate.net/publication/254411078_A_False_Sense_of_Security_Lessons_from_the_Crisis_for_Bank_Management_and_Regulators
  26. Beware of Corporate Debt, Even Non-Junk, Says David Einhorn | Chief Investment Officer,  https://www.ai-cio.com/news/beware-corporate-debt-even-non-junk-says-david-einhorn/
  27. jpmorgan chase whale trades: a case history of derivatives risks and abuses hearing – GovInfo,  https://www.govinfo.gov/content/pkg/CHRG-113shrg80222/pdf/CHRG-113shrg80222.pdf
  28. JP Morgan Gets an Award for London Whale Fiasco, Will Schneiderman Harpoon the Corruption? | PR Watch,  https://www.prwatch.org/news/2013/03/12033/jp-morgan-gets-award-london-whale-fiasco-will-schneiderman-harpoon-corruption
  29. Banking Crisis Not a Black Swan – Atlantic Council,  https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/banking-crisis-not-a-black-swan/
  30. What’s Good about Lying? – Greater Good Science Center,  https://greatergood.berkeley.edu/article/item/whats_good_about_lying
  31. 7 Scaffolding Learning Strategies for the Classroom – University of San Diego Professional & Continuing Ed,  https://pce.sandiego.edu/scaffolding-in-education-examples/
  32. Scaffolding Content – Office of Curriculum, Assessment and Teaching Transformation – University at Buffalo,  https://www.buffalo.edu/catt/teach/develop/build/scaffolding.html
  33. Progressive Disclosure Examples to Simplify Complex SaaS Products – Userpilot,  https://userpilot.com/blog/progressive-disclosure-examples/
  34. Full article: Epistemic Paternalism and Protective Authority in a Non-Ideal World,  https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02691728.2025.2453942
  35. Epistemic Paternalism, Science, And Communication – ResearchGate,  https://www.researchgate.net/publication/392046599_Epistemic_Paternalism_Science_And_Communication
  36. Epistemic Paternalism via Conceptual Engineering | Journal of the American Philosophical Association | Cambridge Core,  https://www.cambridge.org/core/journals/journal-of-the-american-philosophical-association/article/epistemic-paternalism-via-conceptual-engineering/3C84D75EA498FB646ED9D78616961A2F
  37. The UK government’s COVID-19 policy: assessing evidence-informed policy analysis in real time – PubMed Central,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7603640/
  38. Herd immunity – crucial yet irrelevant – Bennett School of Public Policy,  https://www.bennettschool.cam.ac.uk/blog/herd-immunity-crucial-yet-irrelevant/
  39. COVID-19 R0: Magic number or conundrum? – PMC – NIH,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7073717/
  40. On the use of the Reproduction Number for SARS-COV-2: Estimation, Misinterpretations and Relationships with other Ecological Measures | Journal of the Royal Statistical Society Series A – Oxford Academic,  https://academic.oup.com/jrsssa/article/185/Supplement_1/S16/7069477
  41. Interpretation of the Basic and Effective Reproduction Number – PMC – NIH,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7733754/
  42. How Herd Immunity Works | History of Vaccines,  https://historyofvaccines.org/vaccines-101/what-do-vaccines-do/how-herd-immunity-works/
  43. Boris Johnson’s Talk of ‘Herd Immunity’ Raises Alarms | Courthouse News Service,  https://www.courthousenews.com/boris-johnsons-talk-of-herd-immunity-raises-alarms/
  44. Public trust in the Government to control the spread of COVID-19 in England after the first wave—a longitudinal analysis – Oxford Academic,  https://academic.oup.com/eurpub/article/33/6/1155/7242474
  45. The unintended consequences of COVID-19 vaccine policy: why mandates, passports and restrictions may cause more harm than good | BMJ Global Health,  https://gh.bmj.com/content/7/5/e008684
  46. leadership in chaos: angela merkel and eurocrisis,  https://open.metu.edu.tr/bitstream/handle/11511/24676/index.pdf
  47. Angela Merkel draws on science background in Covid-19 explainer – The Guardian,  https://www.theguardian.com/world/2020/apr/16/angela-merkel-draws-on-science-background-in-covid-19-explainer-lockdown-exit
  48. the discourse of Angela Merkel’s media communications during the first wave of the pandemic – CentAUR,  https://centaur.reading.ac.uk/98610/1/Angela_Merkel_Covid-19_v5_revised_Centaur.pdf
  49. Crisis Communication: 3 things business leaders can learn from Prime Minister Jacinda Ardern – Eko,  https://www.ekoapp.com/blog/crisis-communication-3-things-business-leaders-can-learn-from-new-zealands-prime-minister-jacinda-ardern
  50. The ‘team of 5 million’: The joint construction of leadership discourse during the Covid-19 pandemic in New Zealand – PubMed Central,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9764144/
  51. 5 Ways To Develop Negative Capability – Global Coach Group,  https://globalcoachgroup.com/5-ways-to-develop-negative-capability/
  52. Why Developing Negative Capability is Critical in Leadership – Leading Sapiens,  https://www.leadingsapiens.com/developing-negative-capability-leadership/
  53. Progressive Disclosure UX: Making Experience Convenient – Gapsy Studio,  https://gapsystudio.com/blog/progressive-disclosure-ux/
  54. Presentations are Corrupting per Edward Tufte’s “The Cognitive Style of PowerPoint”,  https://www.rightattitudes.com/2016/06/10/the-cognitive-style-of-powerpoint/
  55. The Cognitive Style of Powerpoint: Pitching Out Corrupts Within (eBook) | Edward Tufte,  https://www.edwardtufte.com/book/the-cognitive-style-of-powerpoint-pitching-out-corrupts-within-ebook/
  56. Storytelling with Data – Cole Nussbaumer Knaflic,  https://davooddehghan.ir/wp-content/uploads/Storytelling_with_Data_Lets_Practice_by_Cole_Nussbaumer_Knaflic.pdf
  57. How to turn data into stories – YouTube,  https://www.youtube.com/watch?v=Hfx1X9WSGYQ
  58. Visualizing Uncertainty to Promote Clinicians’ Understanding of Measurement Error – PMC,  https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10623599/
  59. Visualizing Uncertainty for Decision-Making — Why and How? | by Chi | The Startup,  https://chiandhuang.medium.com/visualizing-uncertainty-for-decision-making-why-and-how-7e0c7bded120
  60. What are some criticisms or limitations of the Pyramid Principle? – You Exec,  https://youexec.com/questions/what-are-some-criticisms-or-limitations-of-the-pyramid-
  61. Wicked Problems.pptx,  https://www.slideshare.net/slideshow/wicked-problemspptx/258096079
  62. Systems Thinking: What, Why, When, Where, and How? – The Systems Thinker,  https://thesystemsthinker.com/systems-thinking-what-why-when-where-and-how/
  63. Book Review: Presentation Zen: Simple Ideas on Presentation Design and Delivery by Garr Reynolds (2008),  https://commons.emich.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=&httpsredir=1&article=1044&context=loexquarterly
  64. Presentation Zen: Simple Ideas on Presentation Design and Delivery,  https://yoniekomputer.wordpress.com/wp-content/uploads/2016/07/presentation_zen_design__simple_design_principles_and_techniques_to_enhance_your_presentations.pdf
  65. Wicked Problems: Anatomy & Dynamics + Assignment #1 – Transition Design Seminar CMU,  https://transitiondesignseminarcmu.net/classes-2/mapping-wicked-problems/
  66. Mapping Wicked Problems and Related Stakeholders | by Robert Managad | Negative Effects of Social Networking | Medium,  https://medium.com/negative-effects-of-social-networking/mapping-wicked-problems-and-related-stakeholders-social-networking-453b75cf7811

関連記事

TOP