話し手を科学する

語られないメッセージ:プレゼンテーションにおける非言語コミュニケーションの科学的深掘り

はじめに:言葉を超えて――説得の非言語的側面

優れたプレゼンテーションが、その伝え方一つで台無しになることがある。これは多くの発表者が直面する現実である。内容は練り上げられ、スライドデザインは洗練されていても、話し手の声のトーンや表情がメッセージと一致していなければ、聴衆の心には響かない。これは単なる感覚的な問題ではなく、科学的な根拠に基づいた現象である。非言語コミュニケーションは、プレゼンターが意識すると否とにかかわらず、聴衆が常に解読している第二の情報チャネルなのである。
本稿は、プレゼンテーションにおける非言語コミュニケーションにまつわる最も一般的な通説を解体し、声のトーンや表情が持つ影響力について科学的知見を深く掘り下げる。そして、発表者がこの「語られない言語」を習得し、聴衆とのつながりを深め、説得し、感銘を与えるための、証拠に基づいた実践的なフレームワークを提供することを目的とする。まず、有名な「メラビアンの法則」の神話を解き明かし、次に声と表情の科学へと進み、最後に実践と習熟のための統合的アプローチで締めくくる。

第1章 7-38-55の神話の解体:メラビアンが本当に伝えたかったこと

コミュニケーション論において、最も広く、そして誤って引用される概念の一つが「メラビアンの法則」である。この法則は、非言語コミュニケーションの重要性を説くための便利な道具として使われてきたが、その本来の意味から逸脱した解釈が横行している。本章では、この神話を科学的に解体し、より深く、実践的な教訓である「一貫性(Congruence)」の原則を明らかにする。

1.1 有名な法則とその一般的な解釈

一般的に「メラビアンの法則」または「3Vの法則」として知られるのは、コミュニケーションにおけるメッセージの影響力が、言語情報(Verbal)7%、聴覚情報(Vocal)38%、視覚情報(Visual)55%の割合で構成されるという主張である 1。この数字は非常にインパクトがあり、多くのプレゼンテーション研修やビジネス書で引用されてきた 4。
この解釈は、「話す内容は重要ではない」「見た目がすべてだ」といった危険な結論を導きやすい 6。プレゼンターが見た目や話し方のテクニックにばかり注力し、メッセージの中身を軽視するようになれば、本末転倒である。実際、情報の正確性が重視されるビジネスや学術の場において、言語情報がわずか7%の影響しか持たないというのは、直感的にも考えにくい 9。この広く流布した解釈は、元々の研究の文脈を無視した、重大な誤解に基づいている 10。

1.2 決定的な文脈:原典研究の解明

この法則の提唱者である心理学者アルバート・メラビアンが1967年に行った研究は、一般的なコミュニケーションを対象としたものではなかった。その実験は、非常に限定的かつ特殊な状況下で設計されていた 11。
研究1:「矛盾したコミュニケーションの解読」
この研究では、被験者に「dear(親愛なる)」「maybe(たぶん)」「terrible(ひどい)」といった、それぞれ肯定的、中立的、否定的な意味を持つ単一の単語を聞かせた。その際、単語の意味とは矛盾する声のトーン(例:肯定的な単語を否定的なトーンで発声)で録音された。その結果、被験者は単語そのものの意味よりも、声のトーンから話者の感情を判断する傾向が強いことが示された 11。
研究2:「2つのチャネルにおける非言語コミュニケーションからの態度の推測」
次の研究では、中立的な単語「maybe」を発声する際の「声のトーン」と「顔写真の表情」を比較した。その結果、話者の感情を判断する上で、顔の表情は声のトーンの約1.5倍影響力が大きいと結論付けられた 11。
「法則」の成り立ち
7:38:55という比率は、これら2つの全く異なる実験結果を組み合わせ、推定(extrapolation)して導き出されたものである 11。実験は女性の被験者のみを対象とし、単一の単語のみを使用するなど、その方法論には大きな限界があった 13。したがって、この結果を複雑な情報を伝達するビジネスプレゼンテーションに一般化することは、科学的に妥当ではない。
メラビアン自身も、自身のウェブサイトなどで、この法則が感情や態度(好き嫌いなど)を伝えるコミュニケーション、特に言葉と態度が矛盾している場合にのみ適用可能であり、広く誤用されていると繰り返し述べている 7。

1.3 真の原則:信頼を築く「一貫性」の力

メラビアンの研究から得られる真に価値のある教訓は、数字の比率ではなく、「不一致(Incongruence)」が生じた際に何が起こるか、という点にある 7。
例えば、プレゼンターが「このプロジェクトには自信があります」という言葉を口にしながらも、声は震え、視線は泳ぎ、落ち着きなく体を揺すっているとしよう。このとき、聴衆は言語情報(自信がある)と非言語情報(不安そう)という矛盾したシグナルを受け取る。人間の脳は、このような矛盾を感知すると、無意識のうちに言語情報よりも非言語情報を優先して話者の真意を判断する傾向がある 3。これは、潜在的な欺瞞や危険から身を守るための、本能的な防衛メカニズムと言える。
この法則の神話がこれほどまでに根強く生き残っている背景には、単なる誤解以上の理由がある。それは、この法則が、たとえ不正確な形であっても、人々が日常的に経験する深い直感と共鳴するからである。言葉と態度が食い違う相手に対して抱く違和感や不信感は、誰もが経験したことがあるだろう。脳は、この種の不一致を dishonesty の可能性として検出するように配線されている。つまり、この神話は、この複雑な社会的認知プロセスに対する、単純化された(しかし欠陥のある)経験則として機能してきたのである。
したがって、プレゼンターが目指すべきは、視覚情報や聴覚情報を言語情報より優先させることではない。目指すべきは、発する言葉、響かせる声、そして見せる表情や態度という3つのチャネルが完全に一致し、互いを補強し合う状態、すなわち一貫性(Congruence)を達成することである 1。この一貫性こそが、聴衆に誠実さや信頼性を感じさせ、メッセージを深く浸透させるための基盤となる。

メラビアンの法則の理解:神話 vs. 現実

一般的な誤解(神話)科学的な現実(一貫性の原則)
あらゆるコミュニケーションにおいて、言葉の影響力はわずか7%である。感情や態度に関するメッセージにおいて、言葉と非言語的な手がかり(声のトーンや表情)が矛盾する場合、人々は話者の真の態度を判断するために非言語的な手がかりをより重視する。
プレゼンテーションは見た目や話し方のテクニックが最も重要である。真の教訓は、信頼を築くために、言語、聴覚、視覚のすべてのコミュニケーションチャネルを一致させること(一貫性)の重要性である。
この法則は、ビジネスプレゼンテーション全般に適用できる。この法則は、感情的な態度の伝達という非常に限定的な文脈から導き出されたものであり、情報伝達が主目的のプレゼンテーションにそのまま適用することはできない。

第2章 影響力の音響学:声のデリバリーに関する科学的ガイド

一貫性の原則を理解した上で、次に焦点を当てるべきは、聴覚チャネル、すなわち「声」である。声は単なる言葉の乗り物ではない。それ自体が強力なメッセージを発し、聴衆の認識や感情を形成する。本章では、声の大きさ、速さ、間といった要素が説得力や明瞭性に与える影響を科学的に分析し、信頼性を高めるための音響的特徴を明らかにする。

2.1 基本的な要素:声量、スピード、間の影響

ある研究では、高校生を対象に「話すスピード(速い/遅い)」「声の大きさ(大きい/小さい)」の組み合わせが、プレゼンテーションの説得力と聞き取りやすさにどう影響するかを調査した実験が行われた 15。この実験から、非常に示唆に富む結果が得られている。

  • 発見1(説得力): 最も説得力があると評価されたのは、「速いスピード+大きい声」の組み合わせであった。次に「速いスピード+小さい声」、「遅いスピード+大きい声」と続き、最も説得力がないとされたのは「遅いスピード+小さい声」だった 15。
  • 発見2(明瞭性): 一方、最も聞き取りやすいと評価されたのは、「遅いスピード+大きい声」であった。最も聞き取りにくかったのは「速いスピード+小さい声」だった 15。
  • 発見3(間): 別の実験では、句読点などでより長く意図的な「間」を取るスピーチは、そうでないスピーチに比べて、説得力と聞き取りやすさの両方が高いと評価された 15。

これらの結果は、プレゼンターが管理すべき重要なトレードオフ、すなわち「説得力と明瞭性のパラドックス」を浮き彫りにする。最も説得力のある話し方は、必ずしも最も理解しやすい話し方ではない。では、なぜ速い話し方が、多少聞き取りにくくなるリスクを冒してまで、より説得力を持つのか。それは、速いペースが聴衆に「自信」「専門性」「情熱」といった印象を無意識のうちに与えるからだと考えられる。話の内容を熟知しているからこそ、よどみなく、力強く語ることができると解釈されるのである。対照的に、ゆっくりとした話し方は、明瞭性は高いものの、自信のなさや準備不足と受け取られる可能性も秘めている。

したがって、熟練したプレゼンターは、単一のスピードに固執するのではなく、メッセージの目的に応じて声のペースを自在に操る「コードスイッチャー」でなければならない。情熱を伝え、議論の勢いをつけたい場面では速めのペースを、複雑なデータや重要な結論を伝える場面では意図的にペースを落とし、長い間を効果的に使うことで、聴衆の理解を最大限に引き出す。このように、スピード、声量、間を戦略的に調整する能力こそが、ボーカルデリバリーの核心である。

2.2 信頼性の音響シグネチャ:声量を超えて

説得力は、単に声が大きい、話が速いといったマクロな要素だけで決まるわけではない。より微細な音響的特徴が、聴衆の信頼性や権威性に対する認識を形成していることが、近年の研究で明らかになっている 16。

  • ピッチ(声の高さ): 一般的に、ピッチが高い声は信頼性が低いと認識される傾向があり、逆に低めのピッチの声はより権威的で有能だと評価されることが多い 16。
    強度・エネルギー: 信頼できると認識されるスピーチは、声の強度、すなわちボーカルエネルギーが大きい傾向がある 16。
  • 話速: より速い話速は信頼性と相関することが多く、これは前述の実験結果とも一致する 16。
    息っぽさ(Breathiness)と揺らぎ(Tremolo): 意外なことに、声にわずかな「息っぽさ」が混じっていたり、微細な「揺らぎ」があったりすると、かえって信頼性が高まることがある。これは、話者の誠実さや感情的な関与のシグナルとして解釈されるためかもしれない 16。
  • 間(Pause): 前述の通り、戦略的な間は有効だが、文脈によっては間の挿入が信頼性を低下させることもある 16。「えーっと」「あのー」といったためらいの間(フィラー)は、自信のなさと受け取られる。重要なのは、どこで、どのように間を使うかである。

音響的特徴と信頼性への影響

音響的特徴信頼性への相関的影響主要な研究知見/出典
ピッチ(声の高さ)低いピッチは権威性と相関。高いピッチは信頼性を低下させる可能性がある。Schröder (2017) の研究では、ピッチの上昇が信頼性を低下させることが示された 16。
話速速い話速は信頼性と正の相関があることが多い。Zuckerman (1981) らの研究で、速い話速が信頼性と関連付けられている 16。
声の強度より大きな声の強度は、信頼性の認識と相関する。MFCCs(メル周波数ケプストラム係数)を用いた分析で、信頼できる音声はエネルギーレベルが高いことが示唆されている 16。
ブレスネス (Breathiness)わずかなブレスネスの増加は、信頼性を高めることがある。Schröder (2017) の研究で、ブレスネスの増加が信頼性を向上させることが示された 16。
間の使い方戦略的な間は有効だが、ためらいの間は信頼性を低下させる。Schröder (2017) は間の挿入が信頼性を低下させる可能性を指摘 16。一方で、別の研究では長い間が説得力を高める 15。文脈が重要である。

※Breathiness(ブレスネス)とは、声帯の閉鎖が不完全なことで、声に息が混じって聞こえる状態を指します。歌声に息っぽさを加えて表現力を高めたり、ボーカルエフェクトで声に変化をつけたりする際に使われる言葉で、日本語では「息もれ声」と表現されます。

2.3 理論から実践へ:ボーカルコントロールの習得

これらの科学的知見を、実践的なスキルへと昇華させるための具体的な方法論が存在する。

  • 力の源泉:腹式呼吸
    力強く、響き渡る声は喉からではなく、腹部(横隔膜)から生まれる。腹式呼吸を習得することで、喉に負担をかけることなく、安定した声量と豊かな響きを得ることができる。これは、長時間にわたるプレゼンテーションでも疲れにくい、持続可能な発声の基礎となる 20。
  • 声の多様性(Vocal Variety)
    単調な話し方は、聴衆を退屈させる最も確実な方法の一つである。ピッチ、ペース、声量を意図的に変化させることで、話に抑揚が生まれ、重要なポイントを際立たせることができる。これは、聴覚におけるフラットな表情を避けることに等しい 4。
  • 間の芸術
    沈黙は金なり、という格言はプレゼンテーションにも当てはまる。重要なメッセージを伝える直前の沈黙は期待感を高め、力強い言葉の後の沈黙は、その言葉を聴衆の心に深く刻み込む時間を与える。ためらいのフィラーをなくし、戦略的な沈黙を使いこなすことが重要である 4。
  • 明瞭性と発音
    メッセージがただ聞こえるだけでなく、正確に理解されるためには、明瞭な発音が不可欠である。特に語尾が不明瞭になると、肯定と否定が逆の意味に取られるなど、致命的な誤解を招きかねない。一つ一つの言葉を丁寧に、最後までしっかりと発音することが求められる 23。

第3章 メッセージの顔:表情と視線が認識を形成する仕組み

コミュニケーションの視覚チャネル、すなわち「顔」は、言葉が発せられるよりも速く、そして強力にメッセージを伝える。本章では、表情と視線が、いかにして瞬時に第一印象を形成し、聴衆との深い結びつきを築くのか、その科学的根拠を探る。

3.1 最初の100ミリ秒:第一印象の抗いがたい力

人間の脳は、驚くべき速さで他者を評価する。研究によれば、人の顔を見てからわずか100ミリ秒(0.1秒)という短時間で、その人物の信頼性や能力といった特性について、持続的な第一印象を形成することが示されている 26。
この超高速な判断において、表情は決定的な役割を果たす。特に短い時間での接触において、幸福感のある表情(笑顔)は、一貫して信頼性が高く、親しみやすいと評価される。対照的に、怒りや敵意を示す表情は、支配的で信頼できないというシグナルとして解釈されやすい 26。
これはプレゼンターにとって極めて重要な意味を持つ。ステージに登壇する瞬間や、オンライン会議でカメラがオンになった瞬間の表情は、決して中立的なものではない。それは、プレゼンターが最初の言葉を発する前に、聴衆の認識を方向づける強力なプライミング効果を持つのである。

3.2 感情の普遍的言語:表情の活用法

効果的な表情の活用は、第1章で述べた「一貫性」の原則の視覚的応用である。つまり、表情は本物(Authentic)であり、かつ内容に即している(Appropriate)必要がある 27。

  • 「フラットな表情」の危険性
    無表情、あるいは変化の乏しい表情は、プロフェッショナルであると見なされるどころか、話している内容への無関心、退屈、情熱の欠如と解釈されがちである。これはメッセージの価値を著しく損なう 27。
  • 戦略的な笑顔
    心からの笑顔は、聴衆との間に親密な雰囲気(ラポール)を築き、プレゼンターを親しみやすく、自信に満ちているように見せる強力なツールである 4。しかし、その使用は文脈に依存する。深刻な問題を語っている最中の笑顔は、不一致を生み出し、信頼を破壊する 27。
  • 笑顔を超えて
    コミュニケーションは笑顔だけで成り立つわけではない。好奇心や驚きを示すために眉を上げる、懸念や集中を示すために眉をひそめるといった他の表情も、言葉によるメッセージに深みとニュアンスを加え、聴衆の理解を助ける 28。

3.3 つながりを生む視線:アイコンタクトの科学

視線は、聴衆との間に心理的なつながりを築くための最も直接的な手段である。アイコンタクトを避けることは、多くの場合、不誠実さや自信のなさの表れと受け取られる 4。
聴衆の規模に応じた実践的なテクニックが存在する。

  • 少人数の場合: 一人ひとりと誠実なアイコンタクトを交わし、対話のような雰囲気を作り出す。
  • 大人数の場合: 「ワンセンテンス・ワンパーソン法」が有効である。これは、一つの文や一区切りの話を、会場内の一人の聴衆に向けて語りかけ、次の文では別のエリアの別の人に視線を移すという手法である。これにより、会場全体が「自分に語りかけられている」と感じ、一体感が生まれる 23。
  • オンラインの場合: 画面に映る自分の顔や聴衆の顔を見るのではなく、カメラのレンズを直接見ることが鍵となる。これにより、バーチャルな聴衆との直接的なアイコンタクトを擬似的に作り出すことができる 23。

これらのテクニックは、単なる一方的な情報伝達ではなく、双方向のコミュニケーションを志向するものである。優れたプレゼンターは、視覚的なシグナルを送るだけでなく、聴衆からのシグナルを能動的に受信し、それに応じて自身の振る舞いを調整する。聴衆の表情は、プレゼンターにとってリアルタイムのフィードバックとなる。例えば、聴衆の中に困惑した表情を見つければ、「少し分かりにくかったかもしれませんので、この点を補足します」と即座に対応できる。逆に、同意を示す頷きが多ければ、その勢いに乗って議論をさらに深めることができる 27。このように、プレゼンテーションを静的なパフォーマンスではなく、動的な対話と捉え、聴衆との間に「フィードバックループ」を構築する能力こそが、熟達したコミュニケーターの証なのである。

結論:統合されたプレゼンター:科学を実践に統合する

本稿では、プレゼンテーションにおける非言語コミュニケーションの科学的側面を多角的に検証してきた。最終章では、これらの要素を統合し、スキル向上のための具体的な実践方法を提示することで、本稿の議論を締めくくる。

4.1 フィードバックループ:意図的な実践の科学

非言語コミュニケーションスキルを向上させるための最も強力なツールは、自身のプレゼンテーションをビデオに録画し、客観的に分析することである 9。録画映像は、自分では気づきにくい声の癖、無意識の表情、ジェスチャーなどを、否定しようのない形で示してくれる。
効果を最大化するためには、異なる条件下で録画を視聴することが推奨される。

  • 音声を消して視聴する: 視覚的な手がかり(表情、姿勢、ジェスチャー)のみに集中する。自信があるように見えるか、聴衆とつながっているように見えるか、などを確認する 29。
  • 目を閉じて(音声のみで)聴く: 声のデリバリーに集中する。声は単調ではないか、フィラーワードを多用していないか、ペースに変化はあるか、などを評価する。

さらに、信頼できる同僚や指導者からフィードバックを求めることも非常に有益である。他者は、自分自身が完全に無自覚な習慣を指摘してくれることがある。

4.2 最終的な統合:目標は本物の「一貫性」

本稿で展開してきた議論の核心は、以下の3点に要約できる。

  1. 効果的なコミュニケーションは、単純化された7:38:55の公式ではなく、言語・聴覚・視覚チャネルの一貫性の上に成り立つ。
  2. 声は説得のための強力な道具であり、その信頼性は、ピッチ、ペース、強度などから構成される複雑な音響シグネチャによって形成される。
  3. 顔は、感情的なつながりと信頼を築くための即時的なチャネルとして機能する。

最終的な目標は、完璧な役者になることでも、一連のテクニックを暗記することでもない。それは、自身のメッセージ、声、そして身体が完全に一致し、調和した状態、すなわち統合された真正性(Integrated Authenticity)を達成することである。この状態に至ったとき、コミュニケーションは透明性を持ち、力強く、そして深く人間的なものとなる。これこそが、成功するプレゼンテーションの真の「科学」なのである。

引用文献

  1. プレゼンスキルと「メラビアンの法則 7-38-55」 – 医療基盤研究所, https://www.kibanken.org/post/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%80%8C%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87%E3%80%8D
  2. メラビアンの法則とは?5つのビジネスシーンにおける活用法も解説 – NTTコムウェア, https://www.nttcom.co.jp/dscb/column/detail109/index.html
  3. 誤解されがちな「メラビアンの法則」!正しい意味と活用方法とは?, https://www.ctm.works-hi.co.jp/peoplelabo/merabian/
  4. メラビアンの法則を使ったプレゼン術|カズ|探究×EdTech – note, https://note.com/kazuki_edu/n/nba5a6659c2d9
  5. メラビアンの法則の正しい意味とビジネスにおける活用方法とは | 記事一覧 | 法人のお客さま, https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/395/
  6. メラビアンの法則に要注意! – PREZEN SQUARE, https://www.prezen-square.jp/posts/meravian
  7. 「内容より見た目が重要」は誤解!「メラビアンの法則」を正しく理解して伝わりやすいプレゼンを行おう – ferretメディア, https://ferret-plus.com/4848
  8. メラビアンの法則とは?【わかりやすく解説】第一印象、誤解 – カオナビ人事用語集, https://www.kaonavi.jp/dictionary/melabians-law/
  9. メラビアンの法則とは何か?非言語コミュニケーションの本質を読み解く, https://career-research.mynavi.jp/column/20250604_97130/
  10. メラビアンの法則, http://www.nursessoul.info/nakayama/2017/koike06222017.pdf
  11. Albert Mehrabian – Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Mehrabian
  12. Albert Mehrabian’s studies in nonverbal communication – Speaking about Presenting, https://speakingaboutpresenting.com/albert-mehrabian-nonverbal-communication/
  13. Communication is 93% Nonverbal: An Urban Legend Proliferates – Cornerstone, https://cornerstone.lib.mnsu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1000&context=ctamj
  14. ビジネスに役立つメラビアンの法則とは?第一印象を劇的に良くする方法 – オクゴエ!, https://okugoe.com/mehrabians-law/
  15. 16 保健班 のコピー, https://kozu-osaka.jp/cms/wp-content/uploads/2023/04/538f8830732193ca07a4dce43bcac073.pdf
  16. How does a credible voice sound? | The Journal of the Acoustical …, https://pubs.aip.org/asa/jasa/article/157/5/3780/3347110/How-does-a-credible-voice-sound
  17. How do voice acoustics affect the perceived trustworthiness of a speaker? A systematic review – PMC – PubMed Central, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11931160/
  18. The effect of vocal cues on credibility and attitude change, https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/10570317109373701
  19. How Much of Communication Is Nonverbal? | UT Permian Basin Online, https://online.utpb.edu/about-us/articles/communication/how-much-of-communication-is-nonverbal/
  20. 【セミナーやプレゼンの登壇者向け】相手に伝わりやすい声の出し方とは?, https://www.s-plaza.com/magazine/detail/2011/
  21. 人が聴きやすいプレゼン・声の大きさ編 – 話し方の学校 | 日本パブリック・スピーキング協会, https://hanashikata-school.com/columns/%E4%BA%BA%E3%81%8C%E8%81%B4%E3%81%8D%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E5%A3%B0%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%95%E7%B7%A8/
  22. プレゼンテーションを成功に導く「話し方」のコツ7選 | プレゼンのgood presen!”, https://goodpresen.jp/journal/journal-1220/
  23. プレゼンテーションでの話し方のコツ|聞き手を惹きつける7つのポイント – ビエント高崎, https://www.viento-takasaki.or.jp/column/column-8728/
  24. プレゼンテーションが上達する練習法5選!成功に導く話し方やよくある勘違い | トーストマスターズ日本 | スピーチ、プレゼン – Toastmasters,Japan, https://district76.org/ja/speech-presentation/presentation001/
  25. 伝わるプレゼンの話し方8選|プロが教える秘訣や準備、緊張の解き方まで徹底解説, https://studio.virtual-planner.com/presentation-speaking/
  26. The effects of facial expressions on judgments of others when observing two-person confrontation scenes from a third person perspective – Frontiers, https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2022.856336/full
  27. Facial expressions matter when presenting, here’s why | Duarte, https://www.duarte.com/blog/facial-expressions-matter-when-presenting-heres-why/
  28. Significance of Facial Expressions in Public Speech – SketchBubble, https://www.sketchbubble.com/blog/significance-of-facial-expressions-in-public-speech/
  29. The Impact of Facial Expression in Communication – Speakeasy Inc., https://www.speakeasyinc.com/the-impact-of-facial-expression-in-communication/

関連記事

TOP